脳卒中片麻痺患者の座位体幹傾斜時における恐怖感の検討

脳卒中片麻痺患者のいわゆるプッシャー現象が損傷半球側や特定領域,視空間失認の有無に無関係に出現し,体幹の非麻痺側傾斜に対し強い恐怖心を持つとする報告がある。このことは,プッシャー現象の発現要因の一つに心理的要因が影響していることを示唆している。このような心理的傾向は,明らかに本現象を認めずとも,立ち直り・平衡反応に左右非対称性が認められる片麻痺患者にも内在している可能性が推察される。本研究は,明らかなプッシャー現象を認めない脳卒中片麻痺患者の体幹傾斜時における内省報告から,立ち直り・平衡反応の非対称性と心理的要因との関連性を検討することを目的とした。対象は脳卒中片麻痺患者30例,座位で体幹を左...

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Published in理学療法学 Vol. 30; no. 7; pp. 415 - 420
Main Authors 沼田, 憲治, 阿部, 恭子, 小笹, 佳史, 大野, 範夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士学会 20.12.2003
日本理学療法士協会
Japanese Society of Physical Therapy
Subjects
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ISSN0289-3770
2189-602X
DOI10.15063/rigaku.kj00001019846

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Summary:脳卒中片麻痺患者のいわゆるプッシャー現象が損傷半球側や特定領域,視空間失認の有無に無関係に出現し,体幹の非麻痺側傾斜に対し強い恐怖心を持つとする報告がある。このことは,プッシャー現象の発現要因の一つに心理的要因が影響していることを示唆している。このような心理的傾向は,明らかに本現象を認めずとも,立ち直り・平衡反応に左右非対称性が認められる片麻痺患者にも内在している可能性が推察される。本研究は,明らかなプッシャー現象を認めない脳卒中片麻痺患者の体幹傾斜時における内省報告から,立ち直り・平衡反応の非対称性と心理的要因との関連性を検討することを目的とした。対象は脳卒中片麻痺患者30例,座位で体幹を左右に傾斜させた時の内省報告の結果,麻痺側,非麻痺側傾斜に対する「怖さ」を示す内容から5群に分類された。そのなかで麻痺側に比べ非麻痺側の傾斜に対しより恐怖心を示した症例が30例中15例と高い割合で存在した。さらにこれら15症例の中で非麻痺側傾斜時に体幹の抵抗を示す症例が10例であった。これらのことからプッシャー現象の有無に関わらず,非麻痺側傾斜に対する「怖さ」は片麻痺患者に共通する一つの病態であることが推察される。今回の結果は,片麻痺患者の体幹機能を評価する場合,左右体幹筋活動のみならず,左右への傾斜に対する心理的な側面も踏まえることの重要性が示唆される。
ISSN:0289-3770
2189-602X
DOI:10.15063/rigaku.kj00001019846