新型コロナウイルス感染症―治療戦略とワクチンについて

2021年7月現在, 新型コロナウイルス感染症の治療薬は主に「抗ウイルス薬」「ステロイド」「免疫抑制薬」の3つに分けることができる. 抗ウイルス薬にはファビピラビルとレムデシビルがある. ファビピラビルは軽症者に対しては弱い推奨があるが, 中等症以上ではその推奨はない. レムデシビルは中等症患者に弱い推奨がある. ステロイドは中等症以上では全原因死亡および臨床症状改善において効果が見込まれたため投与が推奨されている. 免疫抑制薬であるトシリズマブは中等症患者に弱い推奨となっている. 新型コロナウイルス感染症の全身管理の中心は呼吸管理である. 特に重症者では急性呼吸窮迫症候群 (ARDS, Ac...

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Published in日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 125; no. 3; pp. 243 - 251
Main Authors 瀬尾, 龍太郎, 建部, 将夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 20.03.2022
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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ISSN2436-5793
2436-5866
DOI10.3950/jibiinkotokeibu.125.3_243

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Summary:2021年7月現在, 新型コロナウイルス感染症の治療薬は主に「抗ウイルス薬」「ステロイド」「免疫抑制薬」の3つに分けることができる. 抗ウイルス薬にはファビピラビルとレムデシビルがある. ファビピラビルは軽症者に対しては弱い推奨があるが, 中等症以上ではその推奨はない. レムデシビルは中等症患者に弱い推奨がある. ステロイドは中等症以上では全原因死亡および臨床症状改善において効果が見込まれたため投与が推奨されている. 免疫抑制薬であるトシリズマブは中等症患者に弱い推奨となっている. 新型コロナウイルス感染症の全身管理の中心は呼吸管理である. 特に重症者では急性呼吸窮迫症候群 (ARDS, Acute Respiratory Distress Syndrome) を併発することが多く, その管理が重要である. 非挿管患者では背景疾患がなければ経皮的酸素飽和度 (SpO2) で92~96% 程度を目標に酸素投与を行う. マスクによる酸素投与で不十分であれば高流量鼻カニュラ酸素療法 (HFNC, High Flow Nasal Cannula) や非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV, Noninvasive Positive Pressure Ventilation) の使用を検討する. 挿管している場合には肺保護換気を行うことが大切である. 肺保護換気とは肺に侵襲を与えないような呼吸器設定とのことで, 低容量換気とプラトー圧制限を行う. それでも呼吸状態が悪化する場合には鎮静薬の調整や筋弛緩薬の使用, 腹臥位療法, 体外式膜型人工肺 (ECMO, extracorporeal membrane oxygenation) といった選択肢を検討していく. 人工呼吸管理が長期化する場合, 気管切開を考慮する必要がある. 気管切開を行う時期については複数の研究があるが, 各国ガイドラインではおおむね気管挿管から10日以降に施行を検討することが推奨されている. 気管切開の手技は経皮的, 外科的それぞれ推奨があり定まったものはない. 新型コロナウイルスワクチンは mRNA ワクチンとウイルスベクターワクチンの2種類がある. 2021年7月現在, 日本で使用されているワクチンはファイザーワクチン, もしくはモデルナワクチンでいずれも mRNA ワクチンである. これらは多くの研究が行われているが, いずれもその予防効果は高いという結果となっている. 日々ウイルスは変異し, いくつか代表的な変異株も日本で流行している. 英国株や南アフリカ株に対して, これらのワクチンはその予防効果が期待されている.
ISSN:2436-5793
2436-5866
DOI:10.3950/jibiinkotokeibu.125.3_243