妊娠・分娩を契機として球後視神経炎に類似した所見を呈した下垂体腺腫の1例

妊娠・分娩を契機として球後視神経炎に類似した片眼性の視機能障害を呈した下垂体腺腫の1例を報告する.症例は24歳の女性,第2子出産後からの左眼視力障害を主訴に近医を受診し,球後視神経炎疑いで当科紹介受診となった.矯正視力は右眼1.2,左眼0.4,限界フリッカ値(CFF)は右眼41 Hz,左眼21 Hz,相対的瞳孔求心路障害(RAPD)は左眼陽性で,前眼部・中間透光体・眼底に異常所見はなかった.Goldmann視野計では,右眼は正常,左眼は中心および傍中心暗点,マリオット盲点の拡大がみられた.光干渉断層計(OCT)による黄斑部網膜内層解析では,右眼は正常,左眼は中心窩周囲,主に鼻側領域で菲薄化がみ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNeuro-Ophthalmology Japan Vol. 34; no. 3; pp. 332 - 340
Main Authors 宇野, 昌明, 水川, 憲一, 荒木, 俊介, 三木, 淳司, 桐生, 純一, 後藤, 克聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経眼科学会 25.09.2017
The Japanese Neuro-Ophthalmology Society
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0289-7024
2188-2002
DOI10.11476/shinkeiganka.34.332

Cover

More Information
Summary:妊娠・分娩を契機として球後視神経炎に類似した片眼性の視機能障害を呈した下垂体腺腫の1例を報告する.症例は24歳の女性,第2子出産後からの左眼視力障害を主訴に近医を受診し,球後視神経炎疑いで当科紹介受診となった.矯正視力は右眼1.2,左眼0.4,限界フリッカ値(CFF)は右眼41 Hz,左眼21 Hz,相対的瞳孔求心路障害(RAPD)は左眼陽性で,前眼部・中間透光体・眼底に異常所見はなかった.Goldmann視野計では,右眼は正常,左眼は中心および傍中心暗点,マリオット盲点の拡大がみられた.光干渉断層計(OCT)による黄斑部網膜内層解析では,右眼は正常,左眼は中心窩周囲,主に鼻側領域で菲薄化がみられた.MRIでは,出血を伴う腫瘍による視交叉部の圧排がみられ,下垂体腺腫による下垂体卒中と診断された.腫瘍摘出1週間後,術前にみられた視機能障害は改善していた.術後6か月の左眼OCT所見では,帯状視神経萎縮に対応する網膜内層の菲薄化が観察された.妊娠中あるいは分娩後に球後視神経炎に類似した片眼性視機能障害を呈した場合,下垂体腺腫も念頭に置く必要があり,MRIによる頭蓋内疾患の精査が鑑別診断に重要である.
ISSN:0289-7024
2188-2002
DOI:10.11476/shinkeiganka.34.332