頭側延髄腹外側野の血管性圧迫を認めた高血圧症の1例

症例は56歳, 男性. 20XX年9月, 職場検診で血圧高値, 尿蛋白を指摘された. 同年11月に当科外来を受診し, 血圧の著明高値, 腎機能低下, 心エコー図検査にて左室肥大, 左室収縮低下を認めた. カルシウム拮抗薬の内服を開始したが, 血圧コントロールに難渋した. 20XX+1年2月には労作時呼吸苦および全身倦怠感が出現し, 血圧185/120mmHg, BNP 3010pg/mLと著明高値, 左室駆出率は35%に悪化, 胸部X線写真では肺うっ血, 胸水を認めたことから心不全の増悪と診断され, 腎不全の進行も認めたため緊急入院となった. 入院後は非侵襲的陽圧換気療法, ニカルジピンとカル...

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Published inShinzo Vol. 48; no. 6; pp. 665 - 671
Main Authors 中村, 琢, 菅森, 峰, 吉冨, 裕之, 遠藤, 昭博, 中島, 龍馬, 三浦, 重禎, 高橋, 伸幸, 安達, 知子, 伊藤, 新平, 岡田, 大司, 田邊, 一明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2016
日本心臓財団・日本循環器学会
Japan Heart Foundation
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.48.665

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Summary:症例は56歳, 男性. 20XX年9月, 職場検診で血圧高値, 尿蛋白を指摘された. 同年11月に当科外来を受診し, 血圧の著明高値, 腎機能低下, 心エコー図検査にて左室肥大, 左室収縮低下を認めた. カルシウム拮抗薬の内服を開始したが, 血圧コントロールに難渋した. 20XX+1年2月には労作時呼吸苦および全身倦怠感が出現し, 血圧185/120mmHg, BNP 3010pg/mLと著明高値, 左室駆出率は35%に悪化, 胸部X線写真では肺うっ血, 胸水を認めたことから心不全の増悪と診断され, 腎不全の進行も認めたため緊急入院となった. 入院後は非侵襲的陽圧換気療法, ニカルジピンとカルペリチドによる降圧を行いながらフロセミドにより利尿を図ったが効果に乏しく, 血液透析を導入し体液コントロールを行った. β遮断薬, アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を追加することで収縮期血圧120~140mmHgとなり, 左室駆出率は51%まで改善した. 高血圧の原因を精査したところ内分泌疾患や腎血管性高血圧は否定的だったが, 頭部MRI・MRA検査で両側椎骨動脈から脳底動脈にかけて拡張と蛇行を認め, 左椎骨動脈は延髄外側部を圧迫していた. 延髄には交感神経の中枢である頭側延髄腹外側野が存在し, 血管により圧迫されることで, 交感神経系の活性化やレニン産生を促進し, 治療抵抗性高血圧を生じることが報告されている. 治療抵抗性高血圧の原因精査の際には一因として延髄の血管性圧迫の関与も念頭に置く必要があると思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.48.665