人工分子を用いたエンドサイトーシス光誘導

「1. はじめに」膜輸送は, 細胞活動の根幹に位置する生命プロセスである. 細胞は, チャネル輸送やトランスポーター輸送に加え, 膜変形による輸送を巧みに使い分け, 細胞内イオン環境の維持や栄養分の取り込みを実現している. 高度な生命システムをシンプルな分子で再構築することは, その現象の要となる部分を見定める点で構成論的な生命の理解に貢献し, また高度機能を発現する機能性分子の合成化学的な設計指針を提示するなど, 生命科学と材料科学の幅広い分野へ波及する. 膜輸送の分野では, これまでにイオンチャネルやトランスポーターの人工模倣分子の開発が活発に行われてきた. 生細胞で機能する人工分子も開発...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 6; pp. 317 - 320
Main Author 村岡, 貴博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.64.317

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Summary:「1. はじめに」膜輸送は, 細胞活動の根幹に位置する生命プロセスである. 細胞は, チャネル輸送やトランスポーター輸送に加え, 膜変形による輸送を巧みに使い分け, 細胞内イオン環境の維持や栄養分の取り込みを実現している. 高度な生命システムをシンプルな分子で再構築することは, その現象の要となる部分を見定める点で構成論的な生命の理解に貢献し, また高度機能を発現する機能性分子の合成化学的な設計指針を提示するなど, 生命科学と材料科学の幅広い分野へ波及する. 膜輸送の分野では, これまでにイオンチャネルやトランスポーターの人工模倣分子の開発が活発に行われてきた. 生細胞で機能する人工分子も開発されるなど, 模倣分子の科学は人工系の枠を飛び出し, 細胞活動を制御する分子ツールや失われた生命機能を人工的に付与する置換分子としての利用が期待される段階に発展しつつある. その一方で, 膜変形により物質を輸送する人工分子の開発は大きく出遅れている.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.317