注意欠如・多動症児の母親におけるマターナル・アタッチメントの特徴

本研究の目的はADHD児の母親のマターナル・アタッチメント(MA)の特徴を明らかにすることである。ADHDと診断された学童の母親と通常学級に在籍する定型発達児の母親,各115名を対象とした。MAに関する質問項目を作成し,同じ質問項目で「現実」と「理想」のMAを尋ねた。ADHD群の「現実」の質問項目について因子分析を行った結果,「対児感情」「子どもの理解(理解)」「子どもに対するあたたかい態度(態度)」の3因子を抽出した。2群の「現実」「理想」3因子得点を群内・群間比較した結果,2群とも「現実」より「理想」の方が有意に高く「理想」は満点に近い程度を示し,「現実」はADHD群の方が有意に低かった。...

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Published in児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 59; no. 5; pp. 614 - 630
Main Authors 眞野, 祥子, 堀内, 史枝, 西本, 佳世子, 髙宮, 静男, 宇野, 宏幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本児童青年精神医学会 01.11.2018
日本児童青年精神医学会
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ISSN0289-0968
2424-1652
DOI10.20615/jscap.59.5_614

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Summary:本研究の目的はADHD児の母親のマターナル・アタッチメント(MA)の特徴を明らかにすることである。ADHDと診断された学童の母親と通常学級に在籍する定型発達児の母親,各115名を対象とした。MAに関する質問項目を作成し,同じ質問項目で「現実」と「理想」のMAを尋ねた。ADHD群の「現実」の質問項目について因子分析を行った結果,「対児感情」「子どもの理解(理解)」「子どもに対するあたたかい態度(態度)」の3因子を抽出した。2群の「現実」「理想」3因子得点を群内・群間比較した結果,2群とも「現実」より「理想」の方が有意に高く「理想」は満点に近い程度を示し,「現実」はADHD群の方が有意に低かった。対象者ごとに「理想」から「現実」の値を引いて得点差を求め,群と因子を要因とした二元配置分散分析を行った結果,対照群と比較してADHD群の得点差が有意に大きい一方で,因子間での主効果は認められなかった。交互作用が有意であったので各群において因子間の多重比較を行った結果,対照群では「理解」「態度」が「対児感情」より得点差が有意に大きかった。対照的にADHD群では「対児感情」「態度」と比較して「理解」の得点差が最も小さかった。ADHD児の母親は障害理解を含め子どものことは理解しているが,子どもに肯定的感情を抱き,あたたかい態度で接したいのに,現実はそれができていないという認識でいることが考えられた。
ISSN:0289-0968
2424-1652
DOI:10.20615/jscap.59.5_614