クリニカルパス導入による医療事故の変化の検討
クリニカルパス（以下、パス）を導入してリスクマネジメントの向上を達成したとする施設はかなり少ない。そこで、パス適用によって医療事故が減少したかどうかを検証した。対象は2013年度から2018年度までの入院患者に発生した医療事故報告で、転倒・転落は対象外とした。方法は、医療事故をパス適用中と非適用中に区別し、それぞれの医療事故発生頻度を算出した。また、医療事故内容を分類し比較した。結果は、パス適用中の医療事故発生頻度は0.001460件/人・日、非適用中事故は0.002714件/人・日であり、有意にパス適用中事故が少なかった。年度ごとの変化をみると、若干の減少傾向がみられ、パス適用率が大幅に増加...
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| Published in | 日本クリニカルパス学会誌 Vol. 22; no. 3; pp. 163 - 168 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本クリニカルパス学会
25.11.2020
日本クリニカルパス学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 2187-6592 2436-1046 |
| DOI | 10.50842/jjscp.22.3_163 |
Cover
| Abstract | クリニカルパス（以下、パス）を導入してリスクマネジメントの向上を達成したとする施設はかなり少ない。そこで、パス適用によって医療事故が減少したかどうかを検証した。対象は2013年度から2018年度までの入院患者に発生した医療事故報告で、転倒・転落は対象外とした。方法は、医療事故をパス適用中と非適用中に区別し、それぞれの医療事故発生頻度を算出した。また、医療事故内容を分類し比較した。結果は、パス適用中の医療事故発生頻度は0.001460件/人・日、非適用中事故は0.002714件/人・日であり、有意にパス適用中事故が少なかった。年度ごとの変化をみると、若干の減少傾向がみられ、パス適用率が大幅に増加した2016年度に医療事故発生頻度はパス適用中、非適用中とも大きく減少した。また、いずれの年度もパス適用中事故発生頻度のほうが低かった。医療事故内容別にみると、差はなかった。以上の結果より、パスを導入したことで短絡的に医療事故が減ったわけではなく、パスの内容や運用方法の改善といった日々の努力、長年の活動によるパスの風土化により、病院全体に標準化、チーム医療が浸透してきている結果とも考えられる。結論として、パスは医療事故減少を通して、医療安全に寄与している可能性が示唆された。 |
|---|---|
| AbstractList | 「要旨」 クリニカルパス(以下, パス)を導入してリスクマネジメントの向上を達成したとする施設はかなり少ない. そこで, パス適用によって医療事故が減少したかどうかを検証した. 対象は2013年度から2018年度までの入院患者に発生した医療事故報告で, 転倒・転落は対象外とした. 方法は, 医療事故をパス適用中と非適用中に区別し, それぞれの医療事故発生頻度を算出した. また, 医療事故内容を分類し比較した. 結果は, パス適用中の医療事故発生頻度は0.001460件/人・日, 非適用中事故は0.002714件/人・日であり, 有意にパス適用中事故が少なかった. 年度ごとの変化をみると, 若干の減少傾向がみられ, パス適用率が大幅に増加した2016年度に医療事故発生頻度はパス適用中, 非適用中とも大きく減少した. また, いずれの年度もパス適用中事故発生頻度のほうが低かった. 医療事故内容別にみると, 差はなかった. 以上の結果より, パスを導入したことで短絡的に医療事故が減ったわけではなく, パスの内容や運用方法の改善といった日々の努力, 長年の活動によるパスの風土化により, 病院全体に標準化, チーム医療が浸透してきている結果とも考えられる. 結論として, パスは医療事故減少を通して, 医療安全に寄与している可能性が示唆された. クリニカルパス（以下、パス）を導入してリスクマネジメントの向上を達成したとする施設はかなり少ない。そこで、パス適用によって医療事故が減少したかどうかを検証した。対象は2013年度から2018年度までの入院患者に発生した医療事故報告で、転倒・転落は対象外とした。方法は、医療事故をパス適用中と非適用中に区別し、それぞれの医療事故発生頻度を算出した。また、医療事故内容を分類し比較した。結果は、パス適用中の医療事故発生頻度は0.001460件/人・日、非適用中事故は0.002714件/人・日であり、有意にパス適用中事故が少なかった。年度ごとの変化をみると、若干の減少傾向がみられ、パス適用率が大幅に増加した2016年度に医療事故発生頻度はパス適用中、非適用中とも大きく減少した。また、いずれの年度もパス適用中事故発生頻度のほうが低かった。医療事故内容別にみると、差はなかった。以上の結果より、パスを導入したことで短絡的に医療事故が減ったわけではなく、パスの内容や運用方法の改善といった日々の努力、長年の活動によるパスの風土化により、病院全体に標準化、チーム医療が浸透してきている結果とも考えられる。結論として、パスは医療事故減少を通して、医療安全に寄与している可能性が示唆された。 |
| Author | 勝尾, 信一 坂下, 香苗 出口, 義信 吹矢, 三恵子 渡邉, まどか |
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| Copyright | 2020 一般社団法人日本クリニカルパス学会 |
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| CorporateAuthor | 安全管理室 福井総合病院 クリティカルパスグループ |
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| DOI | 10.50842/jjscp.22.3_163 |
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| PublicationTitle | 日本クリニカルパス学会誌 |
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| References | 4) 平井有美：チーム医療のためのシステム構築と医療安全．日職災医会誌59：205-209，2011 5) 藤田伸輔：患者安全の保証につなげるためのパス．日クリニカルパス会誌21：99-102，2019． 10.50842/jjscp.21.2_99 1) 一般社団法人日本クリニカルパス学会：クリニカルパスの普及・体制の現状と課題–第19回（2019年度）アンケー ト結果から–．日クリニカルパス会誌22：47-56，2020 7) 佐々木雄啓，岡野太一，松尾寛子，他：クリニカルパスから見たリスクマネジメント．日病薬師会誌40，183-185，2004 3) 山崎友義：クリニカルパスと医療安全．クリニカルパス概論–基礎から学ぶ教科書として，初版，2015，73-81， サイエンティスト社，東京 8) 尾崎まり：多職種連携による転倒予防の実践 急性期病院での転倒予防チーム．J Clin Rehabil 24：1087-1093， 2015 6) 保刈岳雄，藤平大介，松永七枝，他：クリニカルパスと安全管理．日クリニカルパス会誌21：103-105，2019． 10.50842/jjscp.21.2_103 2) 小林美亜：患者安全の保証につなげるためのパスの作成と運用．日クリニカルパス会誌21：83-84，2019． 10.50842/jjscp.21.2_83 9) Tinetti ME, Kumar C: The patient who falls “It's always a Trade-off”. JAMA 303: 258-266, 2010. |
| References_xml | – reference: 3) 山崎友義：クリニカルパスと医療安全．クリニカルパス概論–基礎から学ぶ教科書として，初版，2015，73-81， サイエンティスト社，東京． – reference: 1) 一般社団法人日本クリニカルパス学会：クリニカルパスの普及・体制の現状と課題–第19回（2019年度）アンケー ト結果から–．日クリニカルパス会誌22：47-56，2020． – reference: 2) 小林美亜：患者安全の保証につなげるためのパスの作成と運用．日クリニカルパス会誌21：83-84，2019． 10.50842/jjscp.21.2_83 – reference: 6) 保刈岳雄，藤平大介，松永七枝，他：クリニカルパスと安全管理．日クリニカルパス会誌21：103-105，2019． 10.50842/jjscp.21.2_103 – reference: 8) 尾崎まり：多職種連携による転倒予防の実践 急性期病院での転倒予防チーム．J Clin Rehabil 24：1087-1093， 2015． – reference: 7) 佐々木雄啓，岡野太一，松尾寛子，他：クリニカルパスから見たリスクマネジメント．日病薬師会誌40，183-185，2004． – reference: 4) 平井有美：チーム医療のためのシステム構築と医療安全．日職災医会誌59：205-209，2011． – reference: 9) Tinetti ME, Kumar C: The patient who falls “It's always a Trade-off”. JAMA 303: 258-266, 2010. – reference: 5) 藤田伸輔：患者安全の保証につなげるためのパス．日クリニカルパス会誌21：99-102，2019． 10.50842/jjscp.21.2_99 |
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| SourceID | medicalonline jstage |
| SourceType | Publisher |
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| SubjectTerms | クリニカルパス チーム医療 医療事故 医療安全 標準化 |
| Title | クリニカルパス導入による医療事故の変化の検討 |
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