重篤な経過をたどった鈍的外傷による骨折を伴わない鎖骨下動脈損傷の1例

症例は60歳代,男性。軽トラックを運転中に電柱に衝突して受傷した。救急隊による観察時には外見上外傷は明らかでなく,意識清明であったため直近の第二次救急医療機関に搬送された。搬送中から血圧は低下傾向となり,病院搬入時にはショックバイタルを呈していた。右胸腔でFAST陽性であったが,初期輸液を開始後に血圧は上昇傾向となった。造影CTを施行したところ,右血胸と鎖骨下動脈損傷を認めたが,胸部を含めてその他の合併損傷を指摘し得なかった。CT検査から帰室後に意識レベルが低下し,心停止に至り救命困難であった。本症例を救命するためには,出血性ショックに対する迅速な対応とともに,搬送先病院の変更や,重症外傷患者...

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Published in日本臨床救急医学会雑誌 Vol. 27; no. 1; pp. 54 - 57
Main Authors 池田, 飛鳥, 岸川, 圭嗣, 山崎, 弘貴, 品田, 公太, 今村, 一郎, 松岡, 綾華, 福田, 顕三, 阪本, 雄一郎, 小網, 博之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床救急医学会 29.02.2024
日本臨床救急医学会
Subjects
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ISSN1345-0581
2187-9001
DOI10.11240/jsem.27.54

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Summary:症例は60歳代,男性。軽トラックを運転中に電柱に衝突して受傷した。救急隊による観察時には外見上外傷は明らかでなく,意識清明であったため直近の第二次救急医療機関に搬送された。搬送中から血圧は低下傾向となり,病院搬入時にはショックバイタルを呈していた。右胸腔でFAST陽性であったが,初期輸液を開始後に血圧は上昇傾向となった。造影CTを施行したところ,右血胸と鎖骨下動脈損傷を認めたが,胸部を含めてその他の合併損傷を指摘し得なかった。CT検査から帰室後に意識レベルが低下し,心停止に至り救命困難であった。本症例を救命するためには,出血性ショックに対する迅速な対応とともに,搬送先病院の変更や,重症外傷患者を早急に搬送するシステムの構築が必要であろう。また,骨折や気胸を伴わない胸部外傷においても鎖骨下動脈損傷が存在し,重篤な経過をたどる可能性があるため注意が必要である。
ISSN:1345-0581
2187-9001
DOI:10.11240/jsem.27.54