歯周病メインテナンス期における顆粒配合歯磨剤の効果 ─ 無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験
顆粒配合歯磨剤の市販が開始されて，30年以上が経過しているが，その効果をランダム化比較試験を用いて調べた報告はほとんどなく，現状でその効果が明らかになっているとはいえない．本研究の目的は，顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果および歯周組織への影響を検討することである．対象者は歯周病メインテナンスのために歯科医院に通院している患者であり，研究デザインはランダム化二重盲検クロスオーバー試験である．顆粒配合歯磨剤と顆粒非配合歯磨剤を1か月のウォッシュアウト期間をはさんでそれぞれ3か月間使用し，各歯磨剤の使用開始時と終了時に，同一の歯科医師による検診を行った．PCR値と隣接部位のQHI値の変化は，顆粒配合歯磨...
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| Published in | 口腔衛生学会雑誌 Vol. 70; no. 2; pp. 66 - 72 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 口腔衛生学会
2020
日本口腔衛生学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0023-2831 2189-7379 |
| DOI | 10.5834/jdh.70.2_66 |
Cover
| Abstract | 顆粒配合歯磨剤の市販が開始されて，30年以上が経過しているが，その効果をランダム化比較試験を用いて調べた報告はほとんどなく，現状でその効果が明らかになっているとはいえない．本研究の目的は，顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果および歯周組織への影響を検討することである．対象者は歯周病メインテナンスのために歯科医院に通院している患者であり，研究デザインはランダム化二重盲検クロスオーバー試験である．顆粒配合歯磨剤と顆粒非配合歯磨剤を1か月のウォッシュアウト期間をはさんでそれぞれ3か月間使用し，各歯磨剤の使用開始時と終了時に，同一の歯科医師による検診を行った．PCR値と隣接部位のQHI値の変化は，顆粒配合歯磨剤を使用した場合に有意な改善が認められた．歯周組織の状態，歯肉出血の状況，および歯周ポケットの深さについては有意な差は認められなかったが，顆粒配合歯磨剤を使用した後すべての検診項目の値の改善が認められた．また，クロスオーバー試験における持ち越し効果は認められなかった．なお，顆粒配合歯磨剤使用後に顆粒状物質が残存したのは1名1歯であり，特に炎症，悪化などは認められなかった．顆粒配合歯磨剤は顆粒非配合歯磨剤よりも歯口清掃効果が高かった．しかしながら，歯周組織に対する影響においては顆粒非配合歯磨剤との差は認められなかった． |
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| AbstractList | 顆粒配合歯磨剤の市販が開始されて，30年以上が経過しているが，その効果をランダム化比較試験を用いて調べた報告はほとんどなく，現状でその効果が明らかになっているとはいえない．本研究の目的は，顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果および歯周組織への影響を検討することである．対象者は歯周病メインテナンスのために歯科医院に通院している患者であり，研究デザインはランダム化二重盲検クロスオーバー試験である．顆粒配合歯磨剤と顆粒非配合歯磨剤を1か月のウォッシュアウト期間をはさんでそれぞれ3か月間使用し，各歯磨剤の使用開始時と終了時に，同一の歯科医師による検診を行った．PCR値と隣接部位のQHI値の変化は，顆粒配合歯磨剤を使用した場合に有意な改善が認められた．歯周組織の状態，歯肉出血の状況，および歯周ポケットの深さについては有意な差は認められなかったが，顆粒配合歯磨剤を使用した後すべての検診項目の値の改善が認められた．また，クロスオーバー試験における持ち越し効果は認められなかった．なお，顆粒配合歯磨剤使用後に顆粒状物質が残存したのは1名1歯であり，特に炎症，悪化などは認められなかった．顆粒配合歯磨剤は顆粒非配合歯磨剤よりも歯口清掃効果が高かった．しかしながら，歯周組織に対する影響においては顆粒非配合歯磨剤との差は認められなかった． 概要: 顆粒配合歯磨剤の市販が開始されて, 30年以上が経過しているが, その効果をランダム化比較試験を用いて調べた報告はほとんどなく, 現状でその効果が明らかになっているとはいえない. 本研究の目的は, 顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果および歯周組織への影響を検討することである. 対象者は歯周病メインテナンスのために歯科医院に通院している患者であり, 研究デザインはランダム化二重盲検クロスオーバー試験である. 顆粒配合歯磨剤と顆粒非配合歯磨剤を1か月のウォッシュアウト期間をはさんでそれぞれ3か月間使用し, 各歯磨剤の使用開始時と終了時に, 同一の歯科医師による検診を行った. PCR値と隣接部位のQHI値の変化は, 顆粒配合歯磨剤を使用した場合に有意な改善が認められた. 歯周組織の状態, 歯肉出血の状況, および歯周ポケットの深さについては有意な差は認められなかったが, 顆粒配合歯磨剤を使用した後すべての検診項目の値の改善が認められた. また, クロスオーバー試験における持ち越し効果は認められなかった. なお, 顆粒配合歯磨剤使用後に顆粒状物質が残存したのは1名1歯であり, 特に炎症, 悪化などは認められなかった. 顆粒配合歯磨剤は顆粒非配合歯磨剤よりも歯口清掃効果が高かった. しかしながら, 歯周組織に対する影響においては顆粒非配合歯磨剤との差は認められなかった. |
| Author | 高柳, 篤史 杉原, 直樹 石塚, 洋一 江口, 貴子 小野瀬, 祐紀 鈴木, 誠太郎 今井, 光枝 佐藤, 涼一 |
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| Copyright | 2020 一般社団法人 口腔衛生学会 |
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| CorporateAuthor | 東京歯科大学衛生学講座 東京歯科大学短期大学歯科衛生学科 |
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| EISSN | 2189-7379 |
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| Publisher | 一般社団法人 口腔衛生学会 日本口腔衛生学会 |
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| References | 17) 渡辺 久，江尻健一郎，妻沼有香：マスティックおよびフルボ酸配合歯磨剤の歯周病症状に対する効果に関するランダム化比較対照試験．日歯保存誌 60：135‒144，2017. 22) Carmen Llena, Carlos Oteo, Jesu’s Oteo et al.：Clinical efficacy of a bleaching enzyme-based toothpaste. A double-blind controlled clinical trial. J Dent 44: 8‒12, 2016. 5) 前田勝正，鎖守信弘，原 宣興ほか：辺縁性辺縁性歯周炎における塩化リゾチーム含有歯磨剤の臨床効果について．日歯周誌 28：758‒766，1986. 12) 陳 昭清，山本志穂子，上原律子ほか：歯磨剤中の研磨剤の有無が歯根象牙質の歯ブラシ摩耗に及ぼす影響．日歯保存誌 39：1141‒1149，1996 11) 西川真理子，西 一也，川野留美ほか：顆粒状ゼオライト配合歯磨剤の歯垢除去効果．口腔衛生会誌 42：682‒688，1992. 13) O’Leary TJ, Drake RB, Naylor JE: The plaque control record. J Periodontol 43: 38, 1971. 26) 牧 江寿子：Really? -Oral Health-．日舌側矯歯会誌 23：74‒76，2012 14) Quigley GA, Hein JW: Comparative cleaning efficiency of manual and power brushing. J Am Dent Assoc 65: 26‒29, 1962. 24) 矢納義高，前田晃嗣，矢作和行ほか：活性ゼオライト配合歯磨剤の歯肉炎に与える影響に関する臨床評価．口腔衛生会誌 49：492‒493，1999. 7) 押野一志，吉田秀穂，千葉厚子ほか：顆粒状酸化亜鉛配合歯磨剤による歯垢形成抑制効果．口腔衛生会誌 56：586，2006. 16) Löe H: The gingival index, the plaque index and the retention index systems. J Periodontol 38 (suppl): 610‒616, 1967. 9) 友竹偉則，後藤崇晴，石田雄一ほか：歯磨剤に配合された顆粒成分のインプラント周囲溝への侵入性の調査．日口腔インプラント誌 31：309‒319，2018. 1) 米国予防医療研究班報告：予防医療実践ガイドライン歯科疾患を予防するためのカウンセリング，医学書院，東京，第1版，1993，384頁 8) 江田幸代，高柳篤史，矢納義高：顆粒状清掃剤を配合した歯磨剤が日常の口腔清掃に与える影響．日歯衛会誌 13：32‒42，2019. 15) Turesky S, Gilmore ND, Glickman I: Reduced plaque formation by the chloromethyl analogue of victamine C. J Periodontol 41: 41‒43, 1970. 4) 坂田真理子，平岩 弘，森田 学：塩化リゾチーム含有歯磨剤の歯周疾患への応用．日歯周誌 28：228‒234，1986. 21) 荒井法行，奥津誠一郎，佐藤秀一：ポリリン酸ナトリウム，トラネキサム酸，フッ化ナトリウム配合歯磨剤の歯石予防および歯肉炎予防効果に関する研究．日歯周誌 33：678‒684，1991. 19) 渡辺 久，石原章弘，和泉雄一：マスティックエッセンシャルオイル配合歯磨剤の歯面に対する摩耗性について．日歯保存誌 57：391‒397，2014. 23) 矢納義高，江田幸代，岡島美由紀ほか：発熱性ゼオライト配合歯磨剤の軽度歯肉炎の改善効果に関する研究．口腔衛生会誌 51：48‒56，2001. 6) 山岸 敦，吉田秀徳，前田晃嗣：隣接面歯垢に関する研究 （第2報）隣接面に対する顆粒状研磨剤の歯垢除去効果について．口腔衛生会誌 40：506‒507，1990. 3) 橋本恵子, 外村 学, 吉田秀穂ほか：顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果. 口腔衛生会誌 58：440，2008. 25) 石井肖得，宮本泰和：日本臨床歯周病学会，歯周病患者におけるインプラント治療のガイドライン．クインテッセンス出版，東京，2013，43頁 10) Endoh M, Takayanagi A, Fujiseki M et al.: Effect of toothpaste containing granular calcium carbonate on oral health. J Int Oral Health 11: 249‒255, 2019. 20) 服部幸治，佐藤千奈，高木 寛ほか：植物エキス配合歯磨剤の歯周病改善効果．日補完代替医療会誌 14：27‒32，2017. 2) 中嶋省志：歯科医師・歯科衛生士に知っていてほしい歯磨剤の材料科学とフッ化物のメカニズム．日歯医師会誌 69：963‒971，2017. 18) 渡辺 久，萩原さつき，福田幹久ほか：歯周炎に対する音波振動歯ブラシ使用下でのマスティックエッセンシャルオイル配合歯磨剤の有用性に関する二重盲検無作為化比較試験．薬理と治療 38：915‒925，2010. |
| References_xml | – reference: 9) 友竹偉則，後藤崇晴，石田雄一ほか：歯磨剤に配合された顆粒成分のインプラント周囲溝への侵入性の調査．日口腔インプラント誌 31：309‒319，2018. – reference: 16) Löe H: The gingival index, the plaque index and the retention index systems. J Periodontol 38 (suppl): 610‒616, 1967. – reference: 22) Carmen Llena, Carlos Oteo, Jesu’s Oteo et al.：Clinical efficacy of a bleaching enzyme-based toothpaste. A double-blind controlled clinical trial. J Dent 44: 8‒12, 2016. – reference: 2) 中嶋省志：歯科医師・歯科衛生士に知っていてほしい歯磨剤の材料科学とフッ化物のメカニズム．日歯医師会誌 69：963‒971，2017. – reference: 6) 山岸 敦，吉田秀徳，前田晃嗣：隣接面歯垢に関する研究 （第2報）隣接面に対する顆粒状研磨剤の歯垢除去効果について．口腔衛生会誌 40：506‒507，1990. – reference: 3) 橋本恵子, 外村 学, 吉田秀穂ほか：顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果. 口腔衛生会誌 58：440，2008. – reference: 5) 前田勝正，鎖守信弘，原 宣興ほか：辺縁性辺縁性歯周炎における塩化リゾチーム含有歯磨剤の臨床効果について．日歯周誌 28：758‒766，1986. – reference: 13) O’Leary TJ, Drake RB, Naylor JE: The plaque control record. J Periodontol 43: 38, 1971. – reference: 24) 矢納義高，前田晃嗣，矢作和行ほか：活性ゼオライト配合歯磨剤の歯肉炎に与える影響に関する臨床評価．口腔衛生会誌 49：492‒493，1999. – reference: 26) 牧 江寿子：Really? -Oral Health-．日舌側矯歯会誌 23：74‒76，2012． – reference: 4) 坂田真理子，平岩 弘，森田 学：塩化リゾチーム含有歯磨剤の歯周疾患への応用．日歯周誌 28：228‒234，1986. – reference: 10) Endoh M, Takayanagi A, Fujiseki M et al.: Effect of toothpaste containing granular calcium carbonate on oral health. J Int Oral Health 11: 249‒255, 2019. – reference: 15) Turesky S, Gilmore ND, Glickman I: Reduced plaque formation by the chloromethyl analogue of victamine C. J Periodontol 41: 41‒43, 1970. – reference: 11) 西川真理子，西 一也，川野留美ほか：顆粒状ゼオライト配合歯磨剤の歯垢除去効果．口腔衛生会誌 42：682‒688，1992. – reference: 19) 渡辺 久，石原章弘，和泉雄一：マスティックエッセンシャルオイル配合歯磨剤の歯面に対する摩耗性について．日歯保存誌 57：391‒397，2014. – reference: 14) Quigley GA, Hein JW: Comparative cleaning efficiency of manual and power brushing. J Am Dent Assoc 65: 26‒29, 1962. – reference: 7) 押野一志，吉田秀穂，千葉厚子ほか：顆粒状酸化亜鉛配合歯磨剤による歯垢形成抑制効果．口腔衛生会誌 56：586，2006. – reference: 8) 江田幸代，高柳篤史，矢納義高：顆粒状清掃剤を配合した歯磨剤が日常の口腔清掃に与える影響．日歯衛会誌 13：32‒42，2019. – reference: 18) 渡辺 久，萩原さつき，福田幹久ほか：歯周炎に対する音波振動歯ブラシ使用下でのマスティックエッセンシャルオイル配合歯磨剤の有用性に関する二重盲検無作為化比較試験．薬理と治療 38：915‒925，2010. – reference: 20) 服部幸治，佐藤千奈，高木 寛ほか：植物エキス配合歯磨剤の歯周病改善効果．日補完代替医療会誌 14：27‒32，2017. – reference: 23) 矢納義高，江田幸代，岡島美由紀ほか：発熱性ゼオライト配合歯磨剤の軽度歯肉炎の改善効果に関する研究．口腔衛生会誌 51：48‒56，2001. – reference: 12) 陳 昭清，山本志穂子，上原律子ほか：歯磨剤中の研磨剤の有無が歯根象牙質の歯ブラシ摩耗に及ぼす影響．日歯保存誌 39：1141‒1149，1996． – reference: 17) 渡辺 久，江尻健一郎，妻沼有香：マスティックおよびフルボ酸配合歯磨剤の歯周病症状に対する効果に関するランダム化比較対照試験．日歯保存誌 60：135‒144，2017. – reference: 1) 米国予防医療研究班報告：予防医療実践ガイドライン歯科疾患を予防するためのカウンセリング，医学書院，東京，第1版，1993，384頁． – reference: 21) 荒井法行，奥津誠一郎，佐藤秀一：ポリリン酸ナトリウム，トラネキサム酸，フッ化ナトリウム配合歯磨剤の歯石予防および歯肉炎予防効果に関する研究．日歯周誌 33：678‒684，1991. – reference: 25) 石井肖得，宮本泰和：日本臨床歯周病学会，歯周病患者におけるインプラント治療のガイドライン．クインテッセンス出版，東京，2013，43頁． |
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| SourceID | medicalonline jstage |
| SourceType | Publisher |
| StartPage | 66 |
| SubjectTerms | ランダム化二重盲検クロスオーバー試験 口腔清掃 歯周病メインテナンス期 顆粒配合歯磨剤 |
| Title | 歯周病メインテナンス期における顆粒配合歯磨剤の効果 ─ 無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験 |
| URI | https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh/70/2/70_66/_article/-char/ja http://mol.medicalonline.jp/library/journal/download?GoodsID=dk1dehea/2020/007002/001&name=0066-0072j |
| Volume | 70 |
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| ispartofPNX | 口腔衛生学会雑誌, 2020, Vol.70(2), pp.66-72 |
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