循環器診療における血清心筋トロポニンT測定の意義
患者生命に大きく関与する心筋傷害の有無を迅速かつ正確に検知することは重要なことである. 近年, 迅速判定法であるトロップT試験や血中の心筋トロポニンT(TnT)濃度を測定することによって, 可逆的な心筋傷害や微小な梗塞や壊死による心筋障害の有無を検出できるようになり, 多くの循環器疾患の診断や心事故発生リスク層別化が可能となっている. 欧米ではTnTは急性冠症候群の診断の最も適切な生化学的マーカーとして検査の必須化が奨励されている. また, TnTは冠動脈疾患以外の原因で惹起される心筋傷害や潜在的に進行する心筋障害を検出することにも適するため, うっ血性心不全, 拡張型心筋症, 急性心筋炎など...
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| Published in | 医療 Vol. 55; no. 11; pp. 529 - 537 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 国立医療学会
2001
国立医療学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0021-1699 1884-8729 |
| DOI | 10.11261/iryo1946.55.529 |
Cover
| Summary: | 患者生命に大きく関与する心筋傷害の有無を迅速かつ正確に検知することは重要なことである. 近年, 迅速判定法であるトロップT試験や血中の心筋トロポニンT(TnT)濃度を測定することによって, 可逆的な心筋傷害や微小な梗塞や壊死による心筋障害の有無を検出できるようになり, 多くの循環器疾患の診断や心事故発生リスク層別化が可能となっている. 欧米ではTnTは急性冠症候群の診断の最も適切な生化学的マーカーとして検査の必須化が奨励されている. また, TnTは冠動脈疾患以外の原因で惹起される心筋傷害や潜在的に進行する心筋障害を検出することにも適するため, うっ血性心不全, 拡張型心筋症, 急性心筋炎などの診断や心事故発生リスク層別化にも有用である. さらに, TnTによって急性肺血栓塞栓症, 敗血症性ショック, 脳梗塞の急性期, 慢性腎不全透析などの病態下で惹起されている心筋障害の有無を検出してそれらの心事故発生リスクの層別化が可能である. 本総説では, このような多くの循環器疾患で惹起される心筋傷害の有無を検知し, さらに心事故発生リスク層別化が可能であるTnT測定の意義に関して概説する. |
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| ISSN: | 0021-1699 1884-8729 |
| DOI: | 10.11261/iryo1946.55.529 |