声帯瘢痕に対する肝細胞増殖因子を用いた再生医療:第Ⅰ/Ⅱ相医師主導治験

「緒言」 声帯瘢痕は炎症や外傷後の粘膜硬化性病変であり, 不可逆的で高度な音声障害をきたし, 確立した治療法のない難治性希少疾患である. 種々の音声外科的アプローチが試みられてきたが有効な治療法は確立されていない. 声帯粘膜は他の粘膜とは異なる特異的な組織構造をしており, 粘膜固有層が3層構造であることやヒアルロン酸の豊富な分布が声帯振動に必要不可欠とされている. 粘膜固有層のうち, 中間層と深層は声帯靭帯を形成しており, これはヒト以外の動物には確認されておらず, またヒトにおいても小児には認められない特異的な構造である. 声帯靭帯は声帯のテンションを維持・調整するのに有効と考えられ, その...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in喉頭 Vol. 31; no. 2; pp. 56 - 60
Main Author 平野, 滋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本喉頭科学会 01.12.2019
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-6127
2185-4696
DOI10.5426/larynx.31.56

Cover

More Information
Summary:「緒言」 声帯瘢痕は炎症や外傷後の粘膜硬化性病変であり, 不可逆的で高度な音声障害をきたし, 確立した治療法のない難治性希少疾患である. 種々の音声外科的アプローチが試みられてきたが有効な治療法は確立されていない. 声帯粘膜は他の粘膜とは異なる特異的な組織構造をしており, 粘膜固有層が3層構造であることやヒアルロン酸の豊富な分布が声帯振動に必要不可欠とされている. 粘膜固有層のうち, 中間層と深層は声帯靭帯を形成しており, これはヒト以外の動物には確認されておらず, またヒトにおいても小児には認められない特異的な構造である. 声帯靭帯は声帯のテンションを維持・調整するのに有効と考えられ, その表層を最も柔軟な粘膜固有層浅層が上皮とともに振動することでヒトの幅広い音域の音声生成が可能になると考えられている. 声帯瘢痕ではこの層構造が破綻し密な不良コラーゲン線維によって粘膜固有層が占拠されるとともに, ヒアルロン酸が減少あるいは消失することで, 振動に必要な粘弾性を失う事がわかっている.
ISSN:0915-6127
2185-4696
DOI:10.5426/larynx.31.56