医療事故調査制度の課題─新たな「医療事故」の概念について

医療事故調査制度(以下「医療事故調」)は,2014年6月に成立した改正医療法で設置され,医療の安全を確保し,医療事故の再発防止を図ることを目的とすると位置付けられている.この制度はその後2015年10月より施行され,既に1年余りが経過するに至った(2017年1月現在).この1年間の統計的な数値については,毎月更新されながら開示されており,全国での実施状況を窺い知ることができるが,それを見る限り,事故調査の現場となるべき医療機関や,その調査対象となりうる臨床医の制度に対する理解が深まり,制度が軌道に乗っているとは言い難い状況にある.また,既に施行されているにもかかわらず,医療事故調査制度のあり方...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 37; no. 2; pp. 243 - 251
Main Author 加藤, 愼
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 2017
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.37.243

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Summary:医療事故調査制度(以下「医療事故調」)は,2014年6月に成立した改正医療法で設置され,医療の安全を確保し,医療事故の再発防止を図ることを目的とすると位置付けられている.この制度はその後2015年10月より施行され,既に1年余りが経過するに至った(2017年1月現在).この1年間の統計的な数値については,毎月更新されながら開示されており,全国での実施状況を窺い知ることができるが,それを見る限り,事故調査の現場となるべき医療機関や,その調査対象となりうる臨床医の制度に対する理解が深まり,制度が軌道に乗っているとは言い難い状況にある.また,既に施行されているにもかかわらず,医療事故調査制度のあり方に関する議論や,運用上の疑問に関する検討も収束しているとはいえない.医療事故調に関する課題は,医療事故自体の定義に始まり,調査の手順,報告書のあり方等多岐にわたっている.そんな中で,本稿は,臨床医である麻酔科医が日常の診療の中で知っておくべき基礎知識として,医療事故調の対象となるべき「医療事故」とは何か,またこの制度によって臨床の現場にどのような影響があるかを考える.日常の診療において医療事故調に惑わされたり煩わされたりすることなく,麻酔科医として医療を提供する一助となれば幸いである.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.37.243