腸管壊死を伴わない門脈ガス血症の一例
症例は71歳,男性。虫垂切除術,冠動脈バイパス術の既往。主訴は腹痛。臍周囲圧痛あるが,腹膜刺激症状。血液生化学検査も異常。腹部CTで,肝両葉に肝表面に達する樹枝状ガス像と,上腸間膜動脈周囲に大動脈解離を認めた。以上より,大動脈解離が関与する門脈内ガス血症と診断し,経過観察した。その後,少量の下血と炎症反応の上昇を認め,消化管虚血も否定出来ず手術となった。手術所見は,虫垂炎術後の高度癒着と回腸末端に発赤,浮腫状変化を認めたが,壊死性変化を認めず,癒着剥離術のみを施行。門脈ガス血症の原因は単純性腸閉塞と考えた。経過良好で,第12病日に退院。門脈内ガス血症は,消化管壊死を伴うことが多いが,自験例のよ...
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| Published in | JOURNAL OF THE KYORIN MEDICAL SOCIETY Vol. 39; no. 1+2; pp. 37 - 40 |
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| Main Authors | , , , , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
杏林医学会
2008
The Kyorin Medical Society |
| Subjects | |
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| ISSN | 0368-5829 1349-886X |
| DOI | 10.11434/kyorinmed.39.37 |
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| Summary: | 症例は71歳,男性。虫垂切除術,冠動脈バイパス術の既往。主訴は腹痛。臍周囲圧痛あるが,腹膜刺激症状。血液生化学検査も異常。腹部CTで,肝両葉に肝表面に達する樹枝状ガス像と,上腸間膜動脈周囲に大動脈解離を認めた。以上より,大動脈解離が関与する門脈内ガス血症と診断し,経過観察した。その後,少量の下血と炎症反応の上昇を認め,消化管虚血も否定出来ず手術となった。手術所見は,虫垂炎術後の高度癒着と回腸末端に発赤,浮腫状変化を認めたが,壊死性変化を認めず,癒着剥離術のみを施行。門脈ガス血症の原因は単純性腸閉塞と考えた。経過良好で,第12病日に退院。門脈内ガス血症は,消化管壊死を伴うことが多いが,自験例のように壊死を伴わない腸閉塞が原因のこともある。しかし門脈ガス血症の高い致死率を考え,画像上で門脈内ガスを見れば,消化管壊死やそれに進展する消化管病態を考え,早期手術の考慮が重要である。 |
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| ISSN: | 0368-5829 1349-886X |
| DOI: | 10.11434/kyorinmed.39.37 |