Hyperosmolar hyperglycemic stateを合併した慢性アルコール中毒患者におけるアルコール離脱後の橋中心髄鞘崩壊症

症例は橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis; CPM)の46歳男性である.糖尿病と慢性膵炎を有する20年以上にわたる大酒家で,アルコール離脱数日後から軽度意識障害,構音障害と体幹失調が出現した.入院時にhyperosmolar hyperglycemic stateの病態を呈し,最初の脳MRI拡散強調画像にて橋正中部に高信号の小病変をみとめ,2週間後に典型的なCPM所見へと進展し,4ヵ月後には橋出血の合併が示唆された.CPMの原因として急激な血糖値の変化にともなう血清浸透圧の高度な変動が推定された.CPMの発症および進展予防に際しては,低Na血症補正の変動...

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Published in臨床神経学 Vol. 54; no. 2; pp. 116 - 123
Main Authors 冨本, 秀和, 坂井, 利行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経学会 01.02.2014
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ISSN0009-918X
1882-0654
DOI10.5692/clinicalneurol.54.116

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Summary:症例は橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis; CPM)の46歳男性である.糖尿病と慢性膵炎を有する20年以上にわたる大酒家で,アルコール離脱数日後から軽度意識障害,構音障害と体幹失調が出現した.入院時にhyperosmolar hyperglycemic stateの病態を呈し,最初の脳MRI拡散強調画像にて橋正中部に高信号の小病変をみとめ,2週間後に典型的なCPM所見へと進展し,4ヵ月後には橋出血の合併が示唆された.CPMの原因として急激な血糖値の変化にともなう血清浸透圧の高度な変動が推定された.CPMの発症および進展予防に際しては,低Na血症補正の変動幅として12 mEq/l/日未満を目安に,血糖値の緩徐な適正化と血清浸透圧の変動を最小限に抑制することがきわめて重要である.
ISSN:0009-918X
1882-0654
DOI:10.5692/clinicalneurol.54.116