HILIC-MS-MSによる血漿中アミノグリコシド系抗菌薬の簡易迅速分析法

アミノグリコシド系抗菌薬は腎毒性および神経毒性を有しており,その血中濃度を把握することは治療上重要である.本研究では,ヒト血漿中のアミノグリコシド系抗菌薬6種類について,親水性相互作用液体クロマトグラフィー (HILIC) -タンデム質量分析 (MS-MS) を用いた簡便かつ迅速な分析法を開発し,その有用性の検証を行った.血漿は50µlを分取し,超純水:0.1%ギ酸-アセトニトリル (1:3) の溶液430µlを加え,遠心分離後,上清10µlをInertsil AmideメタルフリーPEEKカラム (長さ50mm,内径2.1mm,粒子径3µm) を装着したHILIC-MS-MS装置に直接注入し...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 76; no. 3; pp. 285 - 298
Main Authors 熊澤, 武志, 佐藤, 啓造, 大宮, 信哉, 佐藤, 淳一, 吉村, 吾志夫, 李, 暁鵬, 澤口, 聡子, 庄司, 幸子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2016
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.76.285

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Summary:アミノグリコシド系抗菌薬は腎毒性および神経毒性を有しており,その血中濃度を把握することは治療上重要である.本研究では,ヒト血漿中のアミノグリコシド系抗菌薬6種類について,親水性相互作用液体クロマトグラフィー (HILIC) -タンデム質量分析 (MS-MS) を用いた簡便かつ迅速な分析法を開発し,その有用性の検証を行った.血漿は50µlを分取し,超純水:0.1%ギ酸-アセトニトリル (1:3) の溶液430µlを加え,遠心分離後,上清10µlをInertsil AmideメタルフリーPEEKカラム (長さ50mm,内径2.1mm,粒子径3µm) を装着したHILIC-MS-MS装置に直接注入した.移動相は0.1%ギ酸水溶液と0.1%ギ酸-アセトニトリル溶液を用い,流量0.6ml/分でリニアグラジエント法による溶出を行った.アミノグリコシド系抗菌薬のシングルMS分析では,6種類すべての薬物において[M+H]+のプロトン化分子がベースピークとなったが,MS-MS分析ではグリコシド結合の開裂による複数のプロダクトイオンが生成された.選択反応モニタリング (SRM) 測定では,プリカーサーイオンとベースピークを示したプロダクトイオンとの組み合わせによって,ストレプトマイシンm/z 582>263,リボスタマイシンm/z 455>163,カナマイシンm/z 485>163,アミカシンm/z 586>264,ジベカシンm/z 452>324,アルベカシンm/z 553>264をそれぞれ設定した.SRMクロマトグラムでは6種類の薬物が1.4分以内に検出され,薬物非添加血漿では対象薬物が検出される溶出時間に重複するピークは見られなかった.マトリックス効果は9.8~72%でイオン化の抑制がみられたほか,回収率は23~77%,抽出効率は72~105%であった.また,定量限界は3.9~16µg/ml,検出限界は0.12~0.98µg/ml,日内変動および日間変動の精度は1.0~19%,真度は80~114%であった.さらに,今回開発したHILIC-MS-MS法をストレプトマイシンまたはカナマイシンの筋肉注射による投与を受けた男性患者1名から注射後,4時間に採血した血漿に応用したところ,前者は16µg/ml,後者は14µg/mlと定量できた.本法は,アミノグリコシド系抗菌薬の簡便かつ迅速な分析法として,臨床領域でのドラッグモニタリングや法医学領域における中毒原因物質の同定・定量に有用であることが示唆された.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.76.285