小型霊長類コモンマーモセットを用いた内耳発生研究
発生に関する知識は再生医療や遺伝子治療の基盤となる重要な知見である . 現 代ではヒト胎児の内耳発生研究への継続的利用は倫理的問題から困難であるた め , 哺乳類の内耳蝸牛の発生学は齧歯類モデルを用いて検討が進められてきた . しかし , 齧歯類とヒトの間では , 内耳発生に関する発生学的な相違点が指摘され ていた . 同時にヒト iPS 細胞研究や内耳再生医療 , 遺伝子治療の発展に伴いヒト 内耳発生に関する知見の医学的・科学的な重要性は増している . このため , ヒト により近いモデルによる内耳発生研究の基盤が求められていた. 当科では新規内耳研基盤の創生を目指し小型霊長類モデル動物であ...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 127; no. 12; pp. 1199 - 1207 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.12.2024
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 2436-5793 2436-5866 |
DOI | 10.3950/jibiinkotokeibu.127.12_1199 |
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Summary: | 発生に関する知識は再生医療や遺伝子治療の基盤となる重要な知見である . 現 代ではヒト胎児の内耳発生研究への継続的利用は倫理的問題から困難であるた め , 哺乳類の内耳蝸牛の発生学は齧歯類モデルを用いて検討が進められてきた . しかし , 齧歯類とヒトの間では , 内耳発生に関する発生学的な相違点が指摘され ていた . 同時にヒト iPS 細胞研究や内耳再生医療 , 遺伝子治療の発展に伴いヒト 内耳発生に関する知見の医学的・科学的な重要性は増している . このため , ヒト により近いモデルによる内耳発生研究の基盤が求められていた. 当科では新規内耳研基盤の創生を目指し小型霊長類モデル動物であるコモンマ ーモセットを標的に研究を進めてきた . コモンマーモセット (Callithrix jacchus) は , 南米原産の新世界ザルであり , 霊長類の中では類人猿・旧世界ザルに 次いでヒトに近く , 霊長類モデル動物として中枢神経系の研究などにおいて広く 用いられている . 当初は遺伝性難聴研究などを中心に成体での検討がメインであ った本動物による内耳研究であるが , 最近 , 内耳発生研究への応用が進んでい る . 本動物を用いた内耳研究は , 従来の齧歯類を中心とした研究とは異なる角度 から新たな知見をもたらすことが期待されている . 本稿では , 本動物における内 耳発生について概説するとともに , 今後の本動物を用いた内耳研究の展望をまと める . |
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ISSN: | 2436-5793 2436-5866 |
DOI: | 10.3950/jibiinkotokeibu.127.12_1199 |