がん患者における食欲不振による栄養障害 グレリンの基礎

がん患者は、しばしば食欲不振、体重減少、全身倦怠感などの症状を呈し、悪液質 (cachexia) という状態に至る。悪液質における体重減少は、飢餓時とは異なり、脂肪組織のみならず骨格筋の多大な喪失を呈する。悪液質の要因として、食欲低下とエネルギー消費の増大だけでなくサイトカインや腫瘍由来物質の産生が関与している。近年、がん患者の食欲不振の原因として注目されているのが、脳内視床下部に存在するneuropeptide Y (NPY) などの食欲促進ペプチドとproopiomelanocortin (POMC) などの食欲抑制物質との不均衡である。グレリンは、胃から分泌され、迷走神経や視床下部に存在...

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Published inJomyaku Keicho Eiyo Vol. 26; no. 5; pp. 1221 - 1225
Main Authors 春田, いづみ, 乾, 明夫, 浅川, 明弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本静脈経腸栄養学会 2011
Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition
Subjects
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ISSN1344-4980
1881-3623
DOI10.11244/jjspen.26.1221

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Summary:がん患者は、しばしば食欲不振、体重減少、全身倦怠感などの症状を呈し、悪液質 (cachexia) という状態に至る。悪液質における体重減少は、飢餓時とは異なり、脂肪組織のみならず骨格筋の多大な喪失を呈する。悪液質の要因として、食欲低下とエネルギー消費の増大だけでなくサイトカインや腫瘍由来物質の産生が関与している。近年、がん患者の食欲不振の原因として注目されているのが、脳内視床下部に存在するneuropeptide Y (NPY) などの食欲促進ペプチドとproopiomelanocortin (POMC) などの食欲抑制物質との不均衡である。グレリンは、胃から分泌され、迷走神経や視床下部に存在する受容体GHSR 1aを活性化し、NPYやAgRPの発現と遊離を増加させ、摂食促進および消費エネルギー抑制に作用する。また、消化管にも液性、神経性に作用し、胃酸分泌促進作用や蠕動運動亢進による胃排出促進作用を有する。
ISSN:1344-4980
1881-3623
DOI:10.11244/jjspen.26.1221