Non-rotation typeの腸回転異常症を伴った胃癌の1例
症例は74歳,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診し胃癌と診断された.治療目的にて当科を紹介され,体中部癌(cT2cN1cH0cP0cM0,cStageII)に対し胃全摘術(D2郭清,Roux-en-Y再建)および胆嚢摘出術を施行した.開腹所見にてTreitz靱帯は無形成で十二指腸下行脚が後腹膜に固定されておらず,十二指腸から小腸は腹腔の右側に,結腸は左側に偏位しておりNon-rotation typeの腸回転異常症と診断した.腸軸捻やLadd靱帯の形成は認めなかったため,胃癌に対する手術のみ施行し,腸回転異常に対する手術は施行しなかった.術後10カ月が経過したが,腸軸捻症状は出現していない.偶発...
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Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 70; no. 4; pp. 1059 - 1064 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床外科学会
2009
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
DOI | 10.3919/jjsa.70.1059 |
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Summary: | 症例は74歳,男性.心窩部痛を主訴に近医を受診し胃癌と診断された.治療目的にて当科を紹介され,体中部癌(cT2cN1cH0cP0cM0,cStageII)に対し胃全摘術(D2郭清,Roux-en-Y再建)および胆嚢摘出術を施行した.開腹所見にてTreitz靱帯は無形成で十二指腸下行脚が後腹膜に固定されておらず,十二指腸から小腸は腹腔の右側に,結腸は左側に偏位しておりNon-rotation typeの腸回転異常症と診断した.腸軸捻やLadd靱帯の形成は認めなかったため,胃癌に対する手術のみ施行し,腸回転異常に対する手術は施行しなかった.術後10カ月が経過したが,腸軸捻症状は出現していない.偶発的に発見された腸回転異常症では積極的にLadd手術や腸管固定術を加える必要はないものの,胃切除術を行う場合には,十二指腸と右側結腸との位置関係が変化し腸軸捻転を発症しやすくなる可能性があることを念頭におき,術後の注意深い観察が必要である. |
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ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
DOI: | 10.3919/jjsa.70.1059 |