当院NICUにおけるMRSA監視培養の費用対効果最適化への取り組み

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の監視培養は,高リスク病棟で実施されるが,検査頻度や検体種類は施設によって様々であり,過剰検査を避けるためにも費用対効果は十分検討されるべきである.当院では2005年から2010年までに細菌培養検査件数が1.5倍に増加し,特に糞便や鼻腔ぬぐい液など監視培養に用いられる検体数が急増していた.そこで,この傾向が顕著な新生児集中治療室(NICU)に着目し,監視培養の実態やMRSA検出状況を調査した.NICUでは,2008年にMRSA検出数が増加したために,全症例で毎週1回,鼻腔ぬぐい液と糞便の監視培養行われ,検体数増加の主因となっていた.後方視的にMRSA検出...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 30; no. 5; pp. 331 - 335
Main Authors 山本, 景一, 宮川, 寿一, 大隈, 雅紀, 池田, 勝義, 手塚, 美奈, 川口, 辰哉, 藤本, 陽子, 安東, 由喜雄, 大林, 光念
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 2015
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ISSN1882-532X
1883-2407
DOI10.4058/jsei.30.331

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Summary:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の監視培養は,高リスク病棟で実施されるが,検査頻度や検体種類は施設によって様々であり,過剰検査を避けるためにも費用対効果は十分検討されるべきである.当院では2005年から2010年までに細菌培養検査件数が1.5倍に増加し,特に糞便や鼻腔ぬぐい液など監視培養に用いられる検体数が急増していた.そこで,この傾向が顕著な新生児集中治療室(NICU)に着目し,監視培養の実態やMRSA検出状況を調査した.NICUでは,2008年にMRSA検出数が増加したために,全症例で毎週1回,鼻腔ぬぐい液と糞便の監視培養行われ,検体数増加の主因となっていた.後方視的にMRSA検出状況を調べると,糞便からMRSAが検出された患児は,鼻腔ぬぐい液からも同時に検出されており,しかも,いったん定着したMRSAは長期間検出され続けることが明らかとなった.これらの結果を踏まえ,2011年より監視培養は鼻腔ぬぐい液のみとし,MRSA定着後は監視培養を中止するなどの変更を行った.その結果,同科のMRSA検出率に変化はなかった.一方で,検体数が前年度比で32%減少し,監視培養に関わる費用は74%の削減となった.このように,疫学データをもとに監視培養方法を見直すことで,無駄のない効果的なMRSA監視が可能になると考えられた.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.30.331