新居論文に対するEditorial Comment

新居論文は院外心停止の原因として多枝冠攣縮の関与が考えられた急性前壁梗塞の症例報告である. これは日本人の突然死の一因と考えられる病態で, 極めて重要な症例である. 一般的に急性心筋梗塞の約4分の3は, 冠動脈粥状不安定プラークの破綻による急性冠閉塞によるとされており, 残りは冠攣縮もしくは冠動脈内皮びらんによるとされているが, 少なくとも急性心筋梗塞における冠攣縮の関与には人種差があり, 日本人では白人に比べ冠攣縮の関与が約3倍多いと報告されている1). 最近の報告から, 日本人における院外心停止症例12例において, 冠攣縮が誘発されたのが10例, 心室細動が誘発されたのが9例(ともに誘発さ...

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Published inShinzo Vol. 41; no. 12; p. 1366
Main Author 福本, 義弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2009
日本心臓財団
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.41.1366

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Summary:新居論文は院外心停止の原因として多枝冠攣縮の関与が考えられた急性前壁梗塞の症例報告である. これは日本人の突然死の一因と考えられる病態で, 極めて重要な症例である. 一般的に急性心筋梗塞の約4分の3は, 冠動脈粥状不安定プラークの破綻による急性冠閉塞によるとされており, 残りは冠攣縮もしくは冠動脈内皮びらんによるとされているが, 少なくとも急性心筋梗塞における冠攣縮の関与には人種差があり, 日本人では白人に比べ冠攣縮の関与が約3倍多いと報告されている1). 最近の報告から, 日本人における院外心停止症例12例において, 冠攣縮が誘発されたのが10例, 心室細動が誘発されたのが9例(ともに誘発されたのが7例)であり, 日本人の突然死に冠攣縮が強く関与していることが示されており2), 新居論文もこれを支持するものである. 現在, 日本における動脈硬化性疾患による死亡率は, 冠動脈疾患7.3%, 脳卒中13.3%, 計20.6%であり, 米国の15.5%, 7.6%, 計23.1%と比較して決して低いレベルではなく, 同等レベルまで上昇してきている.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.41.1366