劇症型心筋炎に急性呼吸窮迫症候群を合併しPCPS・ECMOを使用することで救命に成功した1例

症例は42歳, 男性. 5日前から39℃の発熱あり, 呼吸困難にて当院受診. 来院時収縮期血圧70mmHgであり, 心電図にて完全房室ブロック, 心エコーにて高度び漫性左室壁運動低下を認め, 劇症型心筋炎に伴う心原性ショックと診断した. 直ちにIABP開始し大量にカテコラミン使用するも血行動態維持できず, 気管挿管下に経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support; PCPS)を開始した. 当初, 心筋は浮腫状に肥厚し, 左室壁運動はび漫性に高度低下していたが, 第4病日以降徐々に心機能は回復の兆候を認め, 血行動態は改善に向かった. しかしCRP...

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Published in心臓 Vol. 42; no. 11; pp. 1492 - 1497
Main Authors 早野, 護, 多田, 朋弥, 田村, 俊寛, 木村, 剛, 尾野, 亘, 古川, 裕, 北, 徹, 赤尾, 昌治, 田崎, 淳一, 当麻, 正直
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2010
日本心臓財団
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.42.1492

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Summary:症例は42歳, 男性. 5日前から39℃の発熱あり, 呼吸困難にて当院受診. 来院時収縮期血圧70mmHgであり, 心電図にて完全房室ブロック, 心エコーにて高度び漫性左室壁運動低下を認め, 劇症型心筋炎に伴う心原性ショックと診断した. 直ちにIABP開始し大量にカテコラミン使用するも血行動態維持できず, 気管挿管下に経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support; PCPS)を開始した. 当初, 心筋は浮腫状に肥厚し, 左室壁運動はび漫性に高度低下していたが, 第4病日以降徐々に心機能は回復の兆候を認め, 血行動態は改善に向かった. しかしCRP 55mg/dLと炎症所見が著明に上昇し, 胸部X線にて全肺野にスリガラス状陰影および著明な低酸素血症を認め, 急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS)と診断した. 抗菌薬の投与およびステロイド少量持続投与を行い自己肺の回復を待ったが, ARDSによる呼吸不全は遷延した. 心機能改善してくるにつれ血行動態は安定化したが, 酸素化不良な動脈血が頭蓋内を灌流するようになったため, 第7病日にPCPSを離脱し体外膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)に移行した. 第8病日にはステロイドの効果により自己肺の酸素化改善してきたためECMOを離脱した. 第18病日に抜管に成功した後は非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure vertilation; NPPV)にてサポートし, 独歩にて退院および社会復帰を果たした. 劇症型心筋炎に急性呼吸窮迫症候群を合併し, PCPS, ECMOを使用することで救命に成功した症例を経験したので報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.42.1492