電解質喪失症候群を呈した直腸絨毛腫瘍の1例

直腸絨毛腫瘍により電解質喪失症候群(electrolyte depletion syndrome:EDS)と高NH3血症を発症し,持続血液透析濾過法(continuous hemodiafiltration:CHDF)と腹腔鏡手術により治療した症例を経験したので報告する.症例は68歳の女性.意識障害により当院へ搬送された.血液検査では軽度の電解質異常に加え,脱水による急性腎不全と肝硬変増悪に伴う高NH3血症を認めた.160×150mm大の絨毛腫瘍がCTと下部消化管内視鏡で指摘され,生検の結果はvillous adenomaであった.その後も低K血症を度々認めていたため直腸絨毛腫瘍によるEDSと...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 8; pp. 1517 - 1521
Main Authors 塩崎, 滋弘, 岡島, 正純, 吉田, 弥正, 井谷, 史嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.83.1517

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Summary:直腸絨毛腫瘍により電解質喪失症候群(electrolyte depletion syndrome:EDS)と高NH3血症を発症し,持続血液透析濾過法(continuous hemodiafiltration:CHDF)と腹腔鏡手術により治療した症例を経験したので報告する.症例は68歳の女性.意識障害により当院へ搬送された.血液検査では軽度の電解質異常に加え,脱水による急性腎不全と肝硬変増悪に伴う高NH3血症を認めた.160×150mm大の絨毛腫瘍がCTと下部消化管内視鏡で指摘され,生検の結果はvillous adenomaであった.その後も低K血症を度々認めていたため直腸絨毛腫瘍によるEDSと診断し,低K血症の治療後,腹腔鏡補助下Hartmann手術を施行した.術後病理結果はtubular adenocarcinoma in villous adenomaであった.術後24カ月経過した現在もEDSの再燃を認めず経過している.自験例は肝硬変がベースにあったため,EDSに加え高NH3血症も認めた極めて稀な症例である.頻回の下痢や意識障害を伴うEDSを認めた際には,絨毛腫瘍などの存在を鑑別の一つに挙げ,適切な検査と治療を行うことが重要である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.1517