Porphyromonas gingivalisの口腔感染がコラーゲン誘発関節炎モデルマウスの脊椎に及ぼす影響

目的:歯周病と関節リウマチ(RA)の関係を解明することは歯周医学の観点から重要である.本研究では歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisの口腔感染がRAの増悪に与える影響について,RAモデルマウスを用いて病理組織学的ならびに画像診断学的に検討した. 材料および方法:コラーゲン誘導性関節炎モデルマウスとして,11週齢のDBA/1JマウスをRAモデルマウスとして供した.実験群にはP. gingivalisを2.5% carboxy methylcellulose(CMC)に懸濁したものを0.1ml,1×109CFU/mlの濃度で1日おきにマウスの口腔内に直接投与した.対照...

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Published in日本歯科保存学雑誌 Vol. 65; no. 1; pp. 47 - 55
Main Authors 長谷川, 徹, 佐藤, 匠, 辰巳, 順一, 森永, 啓嗣, 北後, 光信, 安田, 忠司, 清水, 雄太, 金山, 圭一, 伊神, 裕高
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 28.02.2022
日本歯科保存学会
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ISSN0387-2343
2188-0808
DOI10.11471/shikahozon.65.47

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Summary:目的:歯周病と関節リウマチ(RA)の関係を解明することは歯周医学の観点から重要である.本研究では歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalisの口腔感染がRAの増悪に与える影響について,RAモデルマウスを用いて病理組織学的ならびに画像診断学的に検討した. 材料および方法:コラーゲン誘導性関節炎モデルマウスとして,11週齢のDBA/1JマウスをRAモデルマウスとして供した.実験群にはP. gingivalisを2.5% carboxy methylcellulose(CMC)に懸濁したものを0.1ml,1×109CFU/mlの濃度で1日おきにマウスの口腔内に直接投与した.対照群には2.5% CMCを0.1ml,1日おきにマウスの口腔内に直接投与した.両群のマウスは実験開始後45日目に屠殺し,左下肢,脊椎をそれぞれ採取し,以下について解析した.軟エックス線像による左下肢のRA症状発現の評価をした.脊椎の関節周囲骨組織は,micro computed tomography(マイクロCT)による観察,あるいはサフラニン-O/ファストグリーン染色による組織学的形態観察により評価した.脊椎関節は,軟骨に存在するタイプⅡコラーゲンの分解能を観察する目的で,マトリックスメタロプロテアーゼ13(matrix metalloproteinase-13:MMP-13)抗体を用いた免疫組織染色を行った. 成績:軟エックス線像による評価では,実験群は対照群と比較し関節部のアンキローシス,骨の不明瞭および粗糙感を認めた.マイクロCTによる解析では,実験群において脊椎間距離の減少を有意に認めた.組織学的形態では,タイプⅡコラーゲンの顕著な減少が軟骨終板にみられた.MMP-13で染色された軟骨終板において,軟骨終板および線維輪で検出されたMMP-13陽性細胞数は,対照群と比較し実験群では1.6倍増加していた. 結論:P. gingivalisによる口腔感染はコラーゲン誘発関節炎モデルマウスの脊椎関節部においても組織破壊を促進することから,P. gingivalis感染による歯周病は関節リウマチ患者の症状進行に対し,全身的に影響を及ぼす可能性が示唆された.
ISSN:0387-2343
2188-0808
DOI:10.11471/shikahozon.65.47