血栓性素因からみた静脈血栓塞栓症の治療戦略

静脈血栓塞栓症(以下VTE)に対する抗凝固療法は,癌患者,再発例はより長期間の抗凝固療法を行うとしているが,それ以外の血栓性素因を有する症例の抗凝固療法についても考慮する必要がある.VTEと診断後は全症例に対して血液検査で血栓性素因の有無を検査した.悪性腫瘍は適当な方法で診断した.直接経口抗凝固薬(DOAC)を用いて治療を行い,経過観察可能であった138例のうち,血栓性素因合併例をそれぞれのカテゴリーに分類した.VTEに占める血栓性素因の割合は23.2%で,悪性腫瘍(CAT群)10例,抗リン脂質抗体症候群(APS群)19例,プロテインS欠乏症(PS群)7例,プロテインC欠乏症(PC群)3例であ...

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Published in静脈学 Vol. 33; no. 3; pp. 289 - 294
Main Authors 中井, 義廣, 角瀬, 裕子, 岡本, 浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本静脈学会 14.10.2022
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ISSN0915-7395
2186-5523
DOI10.7134/phlebol.22-13

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Summary:静脈血栓塞栓症(以下VTE)に対する抗凝固療法は,癌患者,再発例はより長期間の抗凝固療法を行うとしているが,それ以外の血栓性素因を有する症例の抗凝固療法についても考慮する必要がある.VTEと診断後は全症例に対して血液検査で血栓性素因の有無を検査した.悪性腫瘍は適当な方法で診断した.直接経口抗凝固薬(DOAC)を用いて治療を行い,経過観察可能であった138例のうち,血栓性素因合併例をそれぞれのカテゴリーに分類した.VTEに占める血栓性素因の割合は23.2%で,悪性腫瘍(CAT群)10例,抗リン脂質抗体症候群(APS群)19例,プロテインS欠乏症(PS群)7例,プロテインC欠乏症(PC群)3例であった.CAT群は10例中4例が経過観察中に死亡した.血栓性素因を合併する症例の再発率は18.7%,血栓性素因のない症例の再発率は7.5%であった.血栓性素因合併例の治療については再発率が高い傾向にあるため,投薬期間など個々の症例ごとに検討する必要があると思われた.
ISSN:0915-7395
2186-5523
DOI:10.7134/phlebol.22-13