腹部外傷による腹腔内出血と総腸骨動脈閉塞の同時発症に対し,外シャント作成後の開腹と下肢バイパスの同時手術で救命・急肢し得た1例

症例は77歳,男性.2トンの鉄柱に腹部を挟まれ受傷し前医に救急搬送.CTで腹腔内血腫と右総腸骨動脈から末梢の閉塞を認め,加療目的に転院搬送.血行再建手術に先行して腹腔内の止血術が必要と判断.再灌流まで時間を要すると考え,救急外来にて外シャントを作成し下肢灌流を行った.手術は,先に開腹止血のみを行い,腸管に対する処置は下肢血行再建後とした.露出した右大腿動脈は解離性に閉塞しており,偽腔内の血栓除去と内膜固定後,左右大腿動脈交差バイパス術を施行.その後に小腸の損傷部切除術を施行し,外シャントを抜去した.術後経過は良好で,CTで下肢動脈は良好に描出,歩行可能な状態となった.腹部外傷による腹腔内出血と...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 31; no. 1; pp. 31 - 34
Main Authors 谷川, 和好, 小林, 俊也, 宮入, 剛, 富田, 真央, 富本, 大潤, 杵渕, 聡志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 28.02.2022
日本血管外科学会
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ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.21-00075

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Summary:症例は77歳,男性.2トンの鉄柱に腹部を挟まれ受傷し前医に救急搬送.CTで腹腔内血腫と右総腸骨動脈から末梢の閉塞を認め,加療目的に転院搬送.血行再建手術に先行して腹腔内の止血術が必要と判断.再灌流まで時間を要すると考え,救急外来にて外シャントを作成し下肢灌流を行った.手術は,先に開腹止血のみを行い,腸管に対する処置は下肢血行再建後とした.露出した右大腿動脈は解離性に閉塞しており,偽腔内の血栓除去と内膜固定後,左右大腿動脈交差バイパス術を施行.その後に小腸の損傷部切除術を施行し,外シャントを抜去した.術後経過は良好で,CTで下肢動脈は良好に描出,歩行可能な状態となった.腹部外傷による腹腔内出血と総腸骨動脈の外傷性閉塞から下肢動脈閉塞症を来した症例に,手術に先行する外シャント造設と,手術の順番を工夫することにより,ADLを大きく下げることなく救命・救肢し得た.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.21-00075