化学療法中に発症し外科的治療が奏効した特発性肝円索膿瘍の1例

症例は74歳,男性.左尿管癌に対して化学療法中,心窩部痛を主訴に来院した.来院時,炎症反応高値,胆道系酵素上昇・ビリルビン高値を認め,単純CTで臍静脈索の拡張,肝円索の全長にわたる腫大と内部膿瘍形成を認め,肝円索膿瘍と診断した.当初保存的加療を選択したが,炎症反応が遷延し,CT上膿瘍の拡大を認めたため,手術を行った.手術では,炎症性に肥厚した肝円索を切除し,臍静脈索断端を縫合閉鎖し,腹腔内にドレーンを留置した.膿瘍の細菌検査でKlebsiella pneumoniaeを検出した.病理組織検査では臍静脈壁の肥厚と内腔の閉塞,周囲脂肪組織への炎症細胞の浸潤を認めた.術後麻痺性イレウスを生じたが,膿...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 84; no. 5; pp. 812 - 819
Main Authors 二宮, 理貴, 山田, 永徳, 別宮, 好文, 阿部, 学, 牧, 章, 千代田, 武大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2023
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.84.812

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Summary:症例は74歳,男性.左尿管癌に対して化学療法中,心窩部痛を主訴に来院した.来院時,炎症反応高値,胆道系酵素上昇・ビリルビン高値を認め,単純CTで臍静脈索の拡張,肝円索の全長にわたる腫大と内部膿瘍形成を認め,肝円索膿瘍と診断した.当初保存的加療を選択したが,炎症反応が遷延し,CT上膿瘍の拡大を認めたため,手術を行った.手術では,炎症性に肥厚した肝円索を切除し,臍静脈索断端を縫合閉鎖し,腹腔内にドレーンを留置した.膿瘍の細菌検査でKlebsiella pneumoniaeを検出した.病理組織検査では臍静脈壁の肥厚と内腔の閉塞,周囲脂肪組織への炎症細胞の浸潤を認めた.術後麻痺性イレウスを生じたが,膿瘍の再燃はなく,術後31日目に退院した.肝円索膿瘍は急性腹症の原因となる非常に稀な疾患であり,化学療法中に起きた例は過去に報告例がなく,自験例は貴重な症例であったため報告した.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.84.812