在宅強心薬持続投与にて自宅退院を実現した慢性心不全患者の1例

症例は70代,男性.12年前に不整脈原性右室心筋症と診断され,8年前に両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器を移植された.2週間前からの全身倦怠感を主訴に当院を紹介受診し,慢性心不全の増悪の診断で入院となった.入院時はNYHA Ⅳ度で,低心拍出症候群を呈していたことから同日よりドブタミン持続投与を開始したところ,次第に症状の改善が得られた.内服強心薬などを導入しながら慎重にドブタミンの減量を図ったが,減量過程で2度心不全が再増悪し,強心薬依存・離脱困難と判断した.患者本人が自宅療養を希望されたことから在宅強心薬持続投与へ移行することとし,一定量のドブタミン投与下では運動耐容能が保たれることか...

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Published in心臓 Vol. 55; no. 3; pp. 275 - 280
Main Authors 蔵下, 元気, 南野, 哲男, 三宅, 祐一, 石川, かおり, 大原, 美奈子, 宮井, 翔平, 野間, 貴久, 石澤, 真, 本条, 崇行, 村上, 和司, 石原, 優, 松永, 圭司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.03.2023
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.55.275

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Summary:症例は70代,男性.12年前に不整脈原性右室心筋症と診断され,8年前に両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器を移植された.2週間前からの全身倦怠感を主訴に当院を紹介受診し,慢性心不全の増悪の診断で入院となった.入院時はNYHA Ⅳ度で,低心拍出症候群を呈していたことから同日よりドブタミン持続投与を開始したところ,次第に症状の改善が得られた.内服強心薬などを導入しながら慎重にドブタミンの減量を図ったが,減量過程で2度心不全が再増悪し,強心薬依存・離脱困難と判断した.患者本人が自宅療養を希望されたことから在宅強心薬持続投与へ移行することとし,一定量のドブタミン投与下では運動耐容能が保たれることから,活動範囲を維持するため携帯型輸液ポンプを使用した.病院・在宅チーム間で病状や緊急時対応,在宅環境などを十分に共有し,第116病日に自宅退院を実現し,退院後100日間で有意な症状増悪なく在宅療養を継続している. 在宅強心薬持続投与は強心薬離脱困難な心不全患者における生活の質を維持する上で重要な選択肢となるが,実際に導入するにあたっては費用や使用薬剤において課題があった.また,全国的なニーズに対して応需できる医療機関が乏しく,今後末期心不全患者の在宅医療が普及していくためには,より充実した公的支援や地域連携体制の構築が望まれる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.55.275