左心耳に巨大血栓と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,心房細動を合併した心臓サルコイドーシスの1例

症例は78歳女性.下腿浮腫を主訴に当院受診し,心電図検査で心房細動および経胸壁心臓超音波検査で左心耳に血栓を疑う構造物が指摘され緊急入院となった.経食道心臓超音波検査でも左心耳内に長径34 mm大の構造物を認め,一部左心耳壁から剝離していた.抗凝固療法を行った場合に血栓塞栓症を生じる危険性があり,外科的に血栓摘除と左心耳閉鎖を行う方針とした.術中所見で左心耳内の構造物は血栓であり,左心耳は内膜外膜ともに白色調で硬化しており,左心耳組織の病理学的検討は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と周囲のリンパ球浸潤からサルコイドーシスに矛盾しない所見であった.サルコイドーシスに関連した各種検査を追加したが特異的所見...

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Published in心臓 Vol. 55; no. 5; pp. 504 - 511
Main Authors 池田, 真浩, 北川, 直孝, 東, 雅也, 前田, 宣延, 福尾, 篤子, 勝田, 省嗣, 稲端, 翔太, 賀来, 文治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.05.2023
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.55.504

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Summary:症例は78歳女性.下腿浮腫を主訴に当院受診し,心電図検査で心房細動および経胸壁心臓超音波検査で左心耳に血栓を疑う構造物が指摘され緊急入院となった.経食道心臓超音波検査でも左心耳内に長径34 mm大の構造物を認め,一部左心耳壁から剝離していた.抗凝固療法を行った場合に血栓塞栓症を生じる危険性があり,外科的に血栓摘除と左心耳閉鎖を行う方針とした.術中所見で左心耳内の構造物は血栓であり,左心耳は内膜外膜ともに白色調で硬化しており,左心耳組織の病理学的検討は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫と周囲のリンパ球浸潤からサルコイドーシスに矛盾しない所見であった.サルコイドーシスに関連した各種検査を追加したが特異的所見を認めず,心臓サルコイドーシスの診断基準で組織診断のみを満たす状態であった.一般に心臓病変を認めるサルコイドーシス症例はステロイド内服の適応だが,本症例のように高齢かつ心室側への浸潤が明らかでない場合はステロイド内服による有害事象が有益性を上回ると考えられた.このため本症例ではステロイド投与は行わず,心臓超音波検査,ホルター心電図検査などで定期的かつ慎重に経過観察を行う方針とした.診断から2年以上経過した現時点でも左室収縮障害や致死性不整脈などは認めていない.本症例から,心房性不整脈や左房内血栓の原因として時に心臓サルコイドーシスが存在している場合があることを周知しておく必要があると思われた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.55.504