Klebsiella pneumoniae Carbapenemase型との鑑別を要したAmpC β-ラクタマーゼ産生Klebsiella pneumoniae感染症の一例

AmpC β-ラクタマーゼ産生菌の遺伝情報はプラスミドによって菌株,菌種を超えて伝達されるため,院内感染対策で問題となる.今回我々は,長期に抗菌薬投与をされていた肺炎患者において,Klebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)型との鑑別を要したAmpC β-ラクタマーゼ産生Klebsiella pneumoniaeを検出した一例を経験したので報告する.患者は62歳,男性.平成23年8月近医にて肺化膿症と診断され,治療中に肺出血を併発し当院へ転院した.患者は,入院2週間前からカルバぺネム系薬が投与されていた.気管内採痰から検出されたK. pneumoniaeは,...

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Published in医学検査 Vol. 63; no. 5; pp. 550 - 556
Main Authors 柴田, 絵里子, 高野, 康之, 赤平, 恵美, 立花, 直樹, 大西, 基喜, 坂本, 勇一, 三上, 英子, 手代森, 隆一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.09.2014
日本臨床衛生検査技師会
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.12-87

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Summary:AmpC β-ラクタマーゼ産生菌の遺伝情報はプラスミドによって菌株,菌種を超えて伝達されるため,院内感染対策で問題となる.今回我々は,長期に抗菌薬投与をされていた肺炎患者において,Klebsiella pneumoniae Carbapenemase(KPC)型との鑑別を要したAmpC β-ラクタマーゼ産生Klebsiella pneumoniaeを検出した一例を経験したので報告する.患者は62歳,男性.平成23年8月近医にて肺化膿症と診断され,治療中に肺出血を併発し当院へ転院した.患者は,入院2週間前からカルバぺネム系薬が投与されていた.気管内採痰から検出されたK. pneumoniaeは,カルバぺネム系薬を含む全βラクタム系薬に耐性であったことから,KPCなどのカルバぺネマーゼ産生菌が疑われた.しかし,Hodge’s test,シカベータテスト,メルカプト酢酸の酵素阻害試験はいずれも陰性であった.本菌は,ボロン酸を用いた酵素阻害試験で阻止円の拡大が認められたことから,AmpC β-ラクタマーゼ産生株と推定された.さらに,遺伝子学的検査の結果,本菌はDHA型のAmpC β-ラクタマーゼ産生K. pneumoniaeであることが確認された.今回の分離株におけるimipenem(IPM)のMIC値は4 μg/mLであり,2010年以降のCLSIのブレイクポイントで耐性と判定される株であった.AmpC β-ラクタマーゼでありながらIPMのMICが高かった理由は不明であるが,染色体性カルバぺネマーゼ保有の可能性も否定できないと考える.このような耐性菌に遭遇した場合に備え,検査室では酵素阻害試験などを追試できる体制を整えておくことが必要である.
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.12-87