肝細胞癌症例における銅蓄積の意義

1. はじめに 生体内微量元素の過不足は各種の代謝異常や疾患を引き起こす. 特に, 生体内代謝の主要臓器である肝臓は微量金属の代謝においても主役を果たしており, 銅, 鉄の過剰を原因としたウイルソン病, ヘモクロマトーシスといった疾患が知られている1,2). また, 肝性脳症における亜鉛の関与2), 慢性肝疾患や肝細胞癌における微量金属との関連についても報告がみられる4-12). 我々は高感度で多元素を同時にmg単位の試料中の微量金属含量が検出できるPIXE(Particle Induced X-Ray Emission)法13)を慢性肝疾患に応用し, 金属含有量と慢性肝疾患の進行及び発癌との...

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Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 16; no. 1; pp. 25 - 31
Main Authors 岡部, 真一郎, 江原, 正明, 税所, 宏光, 伊古田, 暢夫, 湯川, 雅枝, 福田, 浩之, 吉川, 正治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 2005
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ISSN0916-717X
1880-1404
DOI10.11299/brte.16.25

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Summary:1. はじめに 生体内微量元素の過不足は各種の代謝異常や疾患を引き起こす. 特に, 生体内代謝の主要臓器である肝臓は微量金属の代謝においても主役を果たしており, 銅, 鉄の過剰を原因としたウイルソン病, ヘモクロマトーシスといった疾患が知られている1,2). また, 肝性脳症における亜鉛の関与2), 慢性肝疾患や肝細胞癌における微量金属との関連についても報告がみられる4-12). 我々は高感度で多元素を同時にmg単位の試料中の微量金属含量が検出できるPIXE(Particle Induced X-Ray Emission)法13)を慢性肝疾患に応用し, 金属含有量と慢性肝疾患の進行及び発癌との関連について検討した. 2. 肝細胞癌における磁気共鳴画像(MRI)の信号強度と病理所見との関連 MRIは肝細胞癌の診断に広く行われており, 特徴的所見よりその確定診断に有用である. すなわち, 小肝細胞癌(腫瘍径3cm以下)ではT1強調像において高信号を呈することが特徴的であり, 60%前後がT1強調像において高信号を呈する. 肝細胞癌でT1強調像において高信号を呈する原因として, 我々は腫瘍内の脂肪変性14), および腫瘍内の銅蓄積の関与を報告した10). さらに, 小肝細胞癌および非癌部肝実質の微量金属含量とMRIの信号強度パターンとの関連について検討した15).
ISSN:0916-717X
1880-1404
DOI:10.11299/brte.16.25