上顎骨に発生したエナメル上皮癌の1例

エナメル上皮癌はエナメル上皮腫の悪性型であり,非常に稀な歯原性腫瘍である。今回われわれは,上顎骨に発生したエナメル上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は62歳の女性。右側頰部の圧痛を主訴に他院を受診した。パノラマX線写真で右側上顎骨のX線透過像を指摘され,某病院歯科口腔外科を受診した。精査後,右側上顎骨腫瘍あるいは囊胞の臨床診断の下に病変の摘出術を受けた。病理組織学的検査にてエナメル上皮癌の診断となり,治療目的に当科へ紹介となった。全身麻酔下に右側上顎部分切除術を施行した。術後3年が経過するが,現在まで再発や転移の所見は認めていない。過去10年間の顎骨領域のエナメル上皮癌の症例報告を検討し...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 33; no. 3; pp. 127 - 135
Main Authors 糸井, 勇人, 領家, 崇, 松田, 慎平, 吉田, 寿人, 吉村, 仁志, 大田, 圭一, 今村, 好章, 山本, 哲嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2021
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.33.127

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Summary:エナメル上皮癌はエナメル上皮腫の悪性型であり,非常に稀な歯原性腫瘍である。今回われわれは,上顎骨に発生したエナメル上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は62歳の女性。右側頰部の圧痛を主訴に他院を受診した。パノラマX線写真で右側上顎骨のX線透過像を指摘され,某病院歯科口腔外科を受診した。精査後,右側上顎骨腫瘍あるいは囊胞の臨床診断の下に病変の摘出術を受けた。病理組織学的検査にてエナメル上皮癌の診断となり,治療目的に当科へ紹介となった。全身麻酔下に右側上顎部分切除術を施行した。術後3年が経過するが,現在まで再発や転移の所見は認めていない。過去10年間の顎骨領域のエナメル上皮癌の症例報告を検討したところ,36例中23例(63.9%)は良性腫瘍と臨床診断され,その中ではエナメル上皮腫の診断が最も多く12例(52.2%)であった。一方,悪性腫瘍の臨床診断に至っていた症例は13例(36.1%)であった。生検を行った27例では,25例(92.6%)が悪性腫瘍の病理組織学的診断を得ており,そのうち19例(76%)がエナメル上皮癌と診断されていた。臨床所見や画像検査ではエナメル上皮癌はエナメル上皮腫との鑑別に苦慮する可能性があるが,生検の実施により,適切な診断や治療方針の決定に至ることが可能となると考えられた。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.33.127