ボゴダ峰 (5, 445m) 登山における生理学的変化

中国天山山脈のボゴダ峰 (5, 445m) で, 4, 000m~5, 000mにおける順化過程の調査をおこなった。結果は次の通りである。 1) 基礎脈拍: 高度2, 000mまで脈拍の増加は殆んどなく, それ以上の高度では, 高度に比例して増加し, ベースキャンプの3, 700m高度では平地に比べ, 16.3±7.7beats/minの増加が見られた。ベースキャンプに滞在するに従って徐々に基礎脈拍の減少が見られ, 3, 700m到達後7日目に, 到達直後に比べ約10beats/minの脈拍の減少が見られた。 2) 基礎体温: 体温はほぼ基礎脈拍と並行して変化し, 3, 700m到達時には,...

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Published in日本生気象学会雑誌 Vol. 19; no. 1; pp. 52 - 58
Main Authors 三木, 健寿, 平川, 和文, 伊藤, 俊之, 能勢, 博, 森本, 武利
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生気象学会 1982
Japanese Society of Biometeorology
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ISSN0389-1313
1347-7617
DOI10.11227/seikisho1966.19.52

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Summary:中国天山山脈のボゴダ峰 (5, 445m) で, 4, 000m~5, 000mにおける順化過程の調査をおこなった。結果は次の通りである。 1) 基礎脈拍: 高度2, 000mまで脈拍の増加は殆んどなく, それ以上の高度では, 高度に比例して増加し, ベースキャンプの3, 700m高度では平地に比べ, 16.3±7.7beats/minの増加が見られた。ベースキャンプに滞在するに従って徐々に基礎脈拍の減少が見られ, 3, 700m到達後7日目に, 到達直後に比べ約10beats/minの脈拍の減少が見られた。 2) 基礎体温: 体温はほぼ基礎脈拍と並行して変化し, 3, 700m到達時には, 平地に比べ0.4±0.6℃の増加を示し, 脈拍と共に高度変化とよく相関した。 3) 息こらえ時間: 全般に高度と逆相関を示し, 4, 000m高度では平地の30%前後に減少した。 4) 尿量: 3, 700m到達直後では尿量は減少傾向を示したが, 到達後7日目に回復し, NaCl排泄も増加した。この時, Na+/K+ratioは有意に増加を示した。 5) 遠征後, Vo2maxは7.3±8.3ml/kg・minの増加を示した。 以上, 4, 000m~5, 000m高度におる1順化は, 高所到達後, 最低7日間を要し, この期間には高度障害諸症状の改善と共に, 脈拍の減少, 体温の低下, Na利尿が観察され, これら比較的容易に測定可能な生理的パラメーターを用いれば, 登山者自身が順化状態を客観的に把握し, 登山行動の目安とすることも可能と考えられる。
ISSN:0389-1313
1347-7617
DOI:10.11227/seikisho1966.19.52