発症後5年以上経過した紫斑病性腎炎92症例の検討

本邦の18才未満の透析患者の約6%は紫斑病性腎炎に起因しているとされている. 著者らは, 発症後5年以上経過した紫斑病性腎炎について多施設共同調査を実施した. 研究協力施設(15施設)では, 発症時平均年令は8.0±2.7才であつた. 予後を治癒, 軽快, 不変, 増悪に分類して検討した結果, 71.6%は治癒と軽快であつた. また, 透析例3.2%を含めた6.5%が増悪例であつた. 血尿, 蛋白尿の程度と予後につき, 各群間では相関を認めなかつた. 腎生検所見では, ISKDC分類皿以下では全例予後良好であつたが, 増悪例はIIIa以上に分布していた. また, ステロイド剤の使用の有無では,...

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Published in医療 Vol. 44; no. 6; pp. 615 - 619
Main Authors 前川, 宗一郎, 厚生省小児慢性疾患の治療及び管理に関する研究会, 矢加部, 茂, 池尻, 公二, 吉田, 康洋, 竹尾, 貞徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1990
国立医療学会
Subjects
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.44.615

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Summary:本邦の18才未満の透析患者の約6%は紫斑病性腎炎に起因しているとされている. 著者らは, 発症後5年以上経過した紫斑病性腎炎について多施設共同調査を実施した. 研究協力施設(15施設)では, 発症時平均年令は8.0±2.7才であつた. 予後を治癒, 軽快, 不変, 増悪に分類して検討した結果, 71.6%は治癒と軽快であつた. また, 透析例3.2%を含めた6.5%が増悪例であつた. 血尿, 蛋白尿の程度と予後につき, 各群間では相関を認めなかつた. 腎生検所見では, ISKDC分類皿以下では全例予後良好であつたが, 増悪例はIIIa以上に分布していた. また, ステロイド剤の使用の有無では, 予後の占める割合に有意差を認めなかつた. 紫斑病性腎炎の長期予後を決定するためには, 現時点では臨床所見のみならず, 追跡腎生検による腎組織所見の検討を含めた長期経過観察が重要であると考えられた.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.44.615