ヒト歯肉線維芽細胞が産生するインターロイキン6に関する研究

歯周病の発症と進行におけるサイトカインネットワークのなかで, 歯肉線維芽細胞がインターロイキン6 IL-6) 産生を介し果たす役割を評価することを目的に, 培養歯肉線維芽細胞のIL-6産生の動態および調節機構 (をmRNAの発現ならびに蛋白の産生段階から調べた。さらに免疫染色によって炎症歯肉における線維芽細胞のIL-6産生の様態について調べた。歯肉線維芽細胞は健常者の辺縁歯肉から分離した細胞を用いた。得られた結果は次の通りである。1) インターロイキン1β (IL-1β) あるいは腫瘍壊死因子 (TNFα) の刺激を受けた歯肉線維芽細胞はIL-6mRNAを発現し, IL-6を分泌した。2) 歯...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 34; no. 2; pp. 301 - 314
Main Author 滝川, 雅之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 1992
日本歯周病学会
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.34.301

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Summary:歯周病の発症と進行におけるサイトカインネットワークのなかで, 歯肉線維芽細胞がインターロイキン6 IL-6) 産生を介し果たす役割を評価することを目的に, 培養歯肉線維芽細胞のIL-6産生の動態および調節機構 (をmRNAの発現ならびに蛋白の産生段階から調べた。さらに免疫染色によって炎症歯肉における線維芽細胞のIL-6産生の様態について調べた。歯肉線維芽細胞は健常者の辺縁歯肉から分離した細胞を用いた。得られた結果は次の通りである。1) インターロイキン1β (IL-1β) あるいは腫瘍壊死因子 (TNFα) の刺激を受けた歯肉線維芽細胞はIL-6mRNAを発現し, IL-6を分泌した。2) 歯肉線維芽細胞のIL-6産生は自ら産生するプロスタグランジンE2 (PGE2) を介して調節を受けることが示された。3) IL-6は歯肉線維芽細胞のDNA合成能およびコラーゲン合成能に影響を及ぼさなかった。4) 歯肉線維芽細胞のIL-6レセプターのmRNA発現は検出されなかった。5) 炎症歯肉においても線維芽細胞がIL-6陽性細胞であることが確かめられた。以上の結果から, 炎症歯肉において歯肉線維芽細胞はIL-6産生細胞として歯周病の炎症反応の調節に関与することが示唆された。
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.34.301