当院における新型コロナウイルス感染症病棟での理学療法士の活動報告
【はじめに】当院は2020 年9 月にCOVID-19 重点医療機関と指定され,高齢者を中心にCOVID-19 患者を受け入れている.当院リハビリテーション科は,入院後早期からの介入を理念としておりCOVID-19 患者に対しても同様に理学療法士(以下,PT)を新型コロナウイルス感染症病棟(以下,COVID-19病棟)に専従配置し可及的早期の介入を実践している.PT がCOVID-19に罹患した高齢者や重症化リスクを有する者に対し早期介入をするには,COVID-19 の病態や感染対策を熟知することが必須である.今回,当院での活動を報告し感染症病棟で働くPT の在り方について考察する.【活動内容...
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| Published in | Kyushu physical therapist Congress Vol. 2022; p. 145 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
2022
Kyushu Physical Therapy Association |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 2434-3889 |
| DOI | 10.32298/kyushupt.2022.0_145 |
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| Summary: | 【はじめに】当院は2020 年9 月にCOVID-19 重点医療機関と指定され,高齢者を中心にCOVID-19 患者を受け入れている.当院リハビリテーション科は,入院後早期からの介入を理念としておりCOVID-19 患者に対しても同様に理学療法士(以下,PT)を新型コロナウイルス感染症病棟(以下,COVID-19病棟)に専従配置し可及的早期の介入を実践している.PT がCOVID-19に罹患した高齢者や重症化リスクを有する者に対し早期介入をするには,COVID-19 の病態や感染対策を熟知することが必須である.今回,当院での活動を報告し感染症病棟で働くPT の在り方について考察する.【活動内容】2020 年9 月よりCOVID-19 患者の日常生活動作(以下,ADL)維持・向上,病棟業務支援を目的にPT をCOVID-19 病棟に専従配置するため感染制御室と協議しPT 業務マニュアルを作成.集中治療領域での業務を単独で遂行できる3 名のPT を選出し,1週間交代制で開始した.毎朝,多職種でのカンファレンスを開催し病状や治療方針を確認し,廃用症候群やADL 低下が予測される者を理学療法の対象として選定した.個別での理学療法が不要と判断された若年者やADL が自立した高齢患者には,PT が全身状態等を把握した後,運動指導書を配布し合併症やADL 維持に努めた.また嚥下機能の低下が危惧される高齢者には,看護師と連携を図りつつ,言語聴覚士と協働しリモートでの嚥下評価や言語聴覚士が直接評価を実施する際のサポートを行い誤嚥性肺炎の予防に努めた.翌年7 月,一部病室を陰圧室に改装しネーザルハイフローの導入を開始した.それに伴い医師と協議し覚醒下腹臥位療法のマニュアルを作成し,主治医指示の下PT と看護師で実施した.2022 年3 月末現在で244 例(平均年齢69.5 ± 20.3 歳)のCOVID-19 患者が入院し,169 例(平均年齢78.4 ± 13.4 歳,介入率69.3%)に対して理学療法を行った.そのうち65歳以上の高齢者159 例に対しては,142 例(平均年齢83.1 ± 7.8 歳,介入率89.3%)に実施し,入院後理学療法介入までの平均日数は1.8 ± 2.0日であった.理学療法以外の業務ではバイタル測定や体重測定,患者移送,食事や清拭介助等の支援も行い,積極的に病棟業務の補助を実施した.【考察】COVID-19病棟でのPT業務について各施設様々な体制で行われているが,当院はPT 協会が病棟業務支援について声明を出した2021 年1 月以前からPT を専従配置し,理学療法と病棟業務支援を精力的に行ってきた.PT が理学療法に加え病棟業務の一部を担う事で看護師との連携が強化され,患者情報や病状変化をタイムリーに捉えられた.またCOVID-19 患者に対する早期からの理学療法は有益との報告もあり,COVID-19 病棟ではPT 専従体制が望ましいと考える.しかし当院ではPT1 名が1 週間病棟担当としたため業務負担が多いと感じた時期もあり,適宜調整を行いながら継続した病棟業務が出来る体制を考慮する必要があった.高齢者を中心に受け入れている当院は,入院後早期からの関りが必要となるが,患者との密接場面が多く感染リスクに関連した心理的なストレスは計り知れない.そのため職種を越えお互いに支え合い,組織による支援が重要であると感じる.ただし,そのような環境でPT 業務を行うためには,感染症に対し様々な知識や対策が必要だがPT は教育カリキュラム上,感染対策に関する項目が乏しい.COVID-19 に限らず,如何なる感染症においてもPT が早期から多職種と連携し医療チームの一員として役割を果たせるよう,勤務施設や教育課程から十分に理解を深められる教育が必要であると考える.【倫理的配慮,利益相反】本報告はヘルシンキ宣言を遵守し個人情報の取り扱いに配慮した.なお,利益相反に関する開示事項はない. |
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| Bibliography: | P-73 |
| ISSN: | 2434-3889 |
| DOI: | 10.32298/kyushupt.2022.0_145 |