尿失禁の薬物治療
尿失禁にも様々な種類がある。真性尿失禁は外科的治療を必要とするし、反射性尿失禁は、自己導尿管理が必要なケースになる。腹圧性尿失禁は、骨盤底筋体操を中心と する理学的療法が中心となる。本セクションでは、比較的頻度の高い切迫性尿失禁、溢 流性尿失禁という聞き慣れない失禁の成因とその治療薬について述べる。また、実臨床では、術後の頻尿や、導尿中の違和感を訴える患者、高齢者の頻繁の ナースコール等でお困りの看護師の方も少なからずおられることと思う。その辺りの解決 ポイントなどを示して、各病院にお持ち帰り頂き少しでも役に立てば、幸甚である。まずは、溢流性尿失禁という聞き慣れない言葉であるが、これは、極度の...
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Published in | The Nursing Pharmacology Conference Vol. 2022.1; p. ES-2 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬理学会
2022
Japanese Pharmacological Society |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2435-8460 |
DOI | 10.34597/npc.2022.1.0_ES-2 |
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Abstract | 尿失禁にも様々な種類がある。真性尿失禁は外科的治療を必要とするし、反射性尿失禁は、自己導尿管理が必要なケースになる。腹圧性尿失禁は、骨盤底筋体操を中心と する理学的療法が中心となる。本セクションでは、比較的頻度の高い切迫性尿失禁、溢 流性尿失禁という聞き慣れない失禁の成因とその治療薬について述べる。また、実臨床では、術後の頻尿や、導尿中の違和感を訴える患者、高齢者の頻繁の ナースコール等でお困りの看護師の方も少なからずおられることと思う。その辺りの解決 ポイントなどを示して、各病院にお持ち帰り頂き少しでも役に立てば、幸甚である。まずは、溢流性尿失禁という聞き慣れない言葉であるが、これは、極度の前立腺肥 大により、尿道が狭小化し、膀胱に高い圧力がかかって、どこにも行きようの亡くなった 尿が、その狭い尿道を通って、チョロチョロと漏れる状態をいう。このタイプの尿失禁は、 心不全、腎不全などで、利尿剤を使用している患者にとっては、膀胱への負担がさらに 増し、加速度的に、この病態を悪化させることになる。薬物治療としては、まずは、尿路の確保のためにα1阻害薬や、PDE5 阻害薬を用い る。また、効果は緩徐であるが、5α還元酵素阻害薬を用いて、時間をかけながら、前立 腺自体の大きさを縮小していくこともできる。それでも反応性が悪い場合は、レーザー蒸 散術などで、狭小化した尿道の開放することもある。さて、もう一つの切迫性尿失禁であるが、これは、超高齢化が進む本邦では、1000 万人を越すと言われている過活動膀胱患者に多く見られる症状である。薬物治療として は、β3作動薬が、抗コリン薬に変わって、第一選択薬になりつつある。男性では、前立 腺肥大により膀胱を圧迫し過活動膀胱を引き起こすこともわかっているので、上述のβ3 作動薬が、抗コリン薬を先に投与すると、狭い尿道、収縮しにくくなった膀胱と相まって、 尿が出せないいわゆる尿閉の状態が起こるので、まずは、過活動膀胱が疑われてもα1 阻害薬や、PDE5 阻害薬を第一選択薬としている。女性には、β3作動薬が、抗コリン薬 が第一選択薬となる。また、決定的な薬物治療のない腹圧性尿失禁に対しては、尿道の 向きを膀胱に対してテープを尿道に引っ掛けて角度をつけるTOT や TVT がある。術後の頻尿対策等の、実臨床の問題点としては、本セクションで、ご質問を賜りながら、 展開していきたいと考えている。 |
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AbstractList | 尿失禁にも様々な種類がある。真性尿失禁は外科的治療を必要とするし、反射性尿失禁は、自己導尿管理が必要なケースになる。腹圧性尿失禁は、骨盤底筋体操を中心と する理学的療法が中心となる。本セクションでは、比較的頻度の高い切迫性尿失禁、溢 流性尿失禁という聞き慣れない失禁の成因とその治療薬について述べる。また、実臨床では、術後の頻尿や、導尿中の違和感を訴える患者、高齢者の頻繁の ナースコール等でお困りの看護師の方も少なからずおられることと思う。その辺りの解決 ポイントなどを示して、各病院にお持ち帰り頂き少しでも役に立てば、幸甚である。まずは、溢流性尿失禁という聞き慣れない言葉であるが、これは、極度の前立腺肥 大により、尿道が狭小化し、膀胱に高い圧力がかかって、どこにも行きようの亡くなった 尿が、その狭い尿道を通って、チョロチョロと漏れる状態をいう。このタイプの尿失禁は、 心不全、腎不全などで、利尿剤を使用している患者にとっては、膀胱への負担がさらに 増し、加速度的に、この病態を悪化させることになる。薬物治療としては、まずは、尿路の確保のためにα1阻害薬や、PDE5 阻害薬を用い る。また、効果は緩徐であるが、5α還元酵素阻害薬を用いて、時間をかけながら、前立 腺自体の大きさを縮小していくこともできる。それでも反応性が悪い場合は、レーザー蒸 散術などで、狭小化した尿道の開放することもある。さて、もう一つの切迫性尿失禁であるが、これは、超高齢化が進む本邦では、1000 万人を越すと言われている過活動膀胱患者に多く見られる症状である。薬物治療として は、β3作動薬が、抗コリン薬に変わって、第一選択薬になりつつある。男性では、前立 腺肥大により膀胱を圧迫し過活動膀胱を引き起こすこともわかっているので、上述のβ3 作動薬が、抗コリン薬を先に投与すると、狭い尿道、収縮しにくくなった膀胱と相まって、 尿が出せないいわゆる尿閉の状態が起こるので、まずは、過活動膀胱が疑われてもα1 阻害薬や、PDE5 阻害薬を第一選択薬としている。女性には、β3作動薬が、抗コリン薬 が第一選択薬となる。また、決定的な薬物治療のない腹圧性尿失禁に対しては、尿道の 向きを膀胱に対してテープを尿道に引っ掛けて角度をつけるTOT や TVT がある。術後の頻尿対策等の、実臨床の問題点としては、本セクションで、ご質問を賜りながら、 展開していきたいと考えている。 |
Author | 梶岡, 俊一 |
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DOI | 10.34597/npc.2022.1.0_ES-2 |
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EISSN | 2435-8460 |
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