局所切除で長期生存が得られた転移性痔瘻癌の1例

症例は79歳男性.9年前に直腸癌で低位前方切除術,膀胱,前立腺合併切除を受けた.病理診断はpT4a,pN0,M0,pStageIIであった.今回検診による便潜血反応陽性を主訴に当院へ紹介となった.内視鏡検査で下行結腸に2型進行癌を認めた.痔瘻が併存しており腹会陰式直腸切断術も選択肢となったが,肛門の温存を強く希望されたため,開腹手術で左半結腸切除術D3を実施した.2期的に痔瘻根治術を行ったところ瘻孔内に微小な転移巣を認めた.術後は補助化学療法を施行せず経過観察とした.切除後8年無再発生存した.大腸癌と痔瘻が併存した際は,転移性痔瘻癌の存在を念頭に置くべきである.転移性痔瘻癌は剥離断端陰性を考慮...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 74; no. 4; pp. 253 - 259
Main Authors 河島, 秀昭, 樫山, 基矢, 鹿野, 哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2021
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.74.253

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Summary:症例は79歳男性.9年前に直腸癌で低位前方切除術,膀胱,前立腺合併切除を受けた.病理診断はpT4a,pN0,M0,pStageIIであった.今回検診による便潜血反応陽性を主訴に当院へ紹介となった.内視鏡検査で下行結腸に2型進行癌を認めた.痔瘻が併存しており腹会陰式直腸切断術も選択肢となったが,肛門の温存を強く希望されたため,開腹手術で左半結腸切除術D3を実施した.2期的に痔瘻根治術を行ったところ瘻孔内に微小な転移巣を認めた.術後は補助化学療法を施行せず経過観察とした.切除後8年無再発生存した.大腸癌と痔瘻が併存した際は,転移性痔瘻癌の存在を念頭に置くべきである.転移性痔瘻癌は剥離断端陰性を考慮した局所切除によって長期生存が得られた.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.74.253