2年間生存し得た心膜原発の巨大悪性中皮腫の1例

症例は心窩部痛を主訴とする33歳の男性で, 心臓腫瘍の精査目的で当科へ入院した. 経胸壁心エコー, コンピュータ断層法, 磁気共鳴画像で心嚢腔内に10.5×8.5cmの巨大な腫瘍を認めた. 腫瘍の全摘出術を試みたが, 腫瘍の心筋層への浸潤と易出血性のため, 腫瘍の摘出を断念し, 姑息的心膜開窓術と腫瘍生検を施行した. 組織所見から悪性中皮腫と診断した. 術後は, 経胸壁心エコー・コンピュータ断層法・磁気共鳴画像にて経時的観察を行うとともに, 対症的治療を行った. 腫瘍径は徐々に増大し, 次第に心内腔を外から圧迫するようになった. 腫瘍の増大とともに腫瘍内部は嚢胞状となった. 診断から2年1ヵ月...

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Published in医療 Vol. 54; no. 9; pp. 414 - 418
Main Authors 田中, 秀樹, 福岡, 嘉弘, 河原田, 孝宣, 田中, 康博, 中村, 一彦, 堀之内, 尚志, 橘, 裕紀, 恒成, 博, 加納, 達雄, 鹿島, 克郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 2000
国立医療学会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.54.414

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Summary:症例は心窩部痛を主訴とする33歳の男性で, 心臓腫瘍の精査目的で当科へ入院した. 経胸壁心エコー, コンピュータ断層法, 磁気共鳴画像で心嚢腔内に10.5×8.5cmの巨大な腫瘍を認めた. 腫瘍の全摘出術を試みたが, 腫瘍の心筋層への浸潤と易出血性のため, 腫瘍の摘出を断念し, 姑息的心膜開窓術と腫瘍生検を施行した. 組織所見から悪性中皮腫と診断した. 術後は, 経胸壁心エコー・コンピュータ断層法・磁気共鳴画像にて経時的観察を行うとともに, 対症的治療を行った. 腫瘍径は徐々に増大し, 次第に心内腔を外から圧迫するようになった. 腫瘍の増大とともに腫瘍内部は嚢胞状となった. 診断から2年1ヵ月後, 呼吸困難・下腿浮腫が増悪したため再入院となった. 心内腔は腫瘍により圧迫され著しく狭小化し, 僧帽弁逆流の出現も認め, 低心拍出量症候群であった. 本症例は, 診断から約2年間生存できたという点と16.2×13.1cmという巨大な塊状を呈したという点でまれであり, 興味ある1例として報告する.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.54.414