大腸癌切除時における腸管内遊離癌細胞の検出頻度と臨床的意義

目的: 自動縫合器を用いた機能的端端吻合の普及にともない,吻合部再発の報告が増加している.吻合部再発の原因の1つと考えられる腸管内遊離癌細胞の存在について検討した.対象と方法: 2005年11月から2007年8月までに当科で開腹手術を施行した大腸癌67例を対象とした.病変部腸管を摘出後,口側,肛門側腸管内をpovidone-iodine綿球を用いて3回清拭し,その前後で吻合部腸管粘膜面の擦過細胞診を施行した.さらに,2006年10月以降は,癌細胞の術中腸管内散布を防止する目的で開腹直後に癌部の口側,肛門側の腸管を結紮した.細胞診でclass IV, Vとされたものを癌細胞陽性とした.結果: 腸...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 62; no. 1; pp. 1 - 6
Main Authors 飯野, 弥, 三井, 文彦, 藤井, 秀樹, 森, 義之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2009
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.62.1

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Summary:目的: 自動縫合器を用いた機能的端端吻合の普及にともない,吻合部再発の報告が増加している.吻合部再発の原因の1つと考えられる腸管内遊離癌細胞の存在について検討した.対象と方法: 2005年11月から2007年8月までに当科で開腹手術を施行した大腸癌67例を対象とした.病変部腸管を摘出後,口側,肛門側腸管内をpovidone-iodine綿球を用いて3回清拭し,その前後で吻合部腸管粘膜面の擦過細胞診を施行した.さらに,2006年10月以降は,癌細胞の術中腸管内散布を防止する目的で開腹直後に癌部の口側,肛門側の腸管を結紮した.細胞診でclass IV, Vとされたものを癌細胞陽性とした.結果: 腸管粘膜面の癌細胞の検出率は,清拭前には口側断端12.5%,肛門側断端21.2%であった.一方,清拭後には,全例がclass Iで癌細胞陰性であった.癌細胞の検出率は,腸管結紮の有無,癌の占居部位,深達度,肉眼型,腸管切除断端までの距離では有意差を認めなかったが,肛門側腸管では,腫瘍径が50mm以上あるいは腫瘍の環周率が80%以上の群で有意に癌細胞が検出される頻度が高かった.術前腸管処置の有無でみると,肛門側では前処置としてニフレック®を服用しなかった群で癌細胞の検出率が高い傾向がみられた.考察: 大腸癌切除時の吻合部再発の原因の1つと考えられる腸管内遊離癌細胞が存在することが明らかとなった.遊離癌細胞が断端腸管粘膜面の清拭により除去された.大腸癌切除時の腸管内腔の清拭は吻合部再発の予防に極めて有用である.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.62.1