歯科補綴における文章発音による機能評価の現状, 問題点および将来展望
文章発音時の口腔顔面の調音運動の観点から無歯顎や口蓋裂被験者の調音障害を評価する方法を確立するために行われた研究について概説する. ある種の言語音を形成するためには, 舌は歯, 歯槽堤, 口蓋の種々の部分に接触する. したがって, これらの組織を補綴装置によって置き換え, あるいは, 覆うと固有感覚のフィードバック機構に変化が起こるため, 調音動作が阻害されるかもしれない. これに関連して, 発音時の舌と口蓋および歯列との接触パターンを確認するために静的パラトグラフィーやダイナミックパラトグラフィーが用いられてきたが, これらの方法を口蓋裂患者などの補綴処置経過中における調音異常の程度を測定す...
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| Published in | 日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 45; no. 1; pp. 1 - 22 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
社団法人 日本補綴歯科学会
2001
日本補綴歯科学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0389-5386 1883-177X |
| DOI | 10.2186/jjps.45.1 |
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| Summary: | 文章発音時の口腔顔面の調音運動の観点から無歯顎や口蓋裂被験者の調音障害を評価する方法を確立するために行われた研究について概説する. ある種の言語音を形成するためには, 舌は歯, 歯槽堤, 口蓋の種々の部分に接触する. したがって, これらの組織を補綴装置によって置き換え, あるいは, 覆うと固有感覚のフィードバック機構に変化が起こるため, 調音動作が阻害されるかもしれない. これに関連して, 発音時の舌と口蓋および歯列との接触パターンを確認するために静的パラトグラフィーやダイナミックパラトグラフィーが用いられてきたが, これらの方法を口蓋裂患者などの補綴処置経過中における調音異常の程度を測定するために適用した. また, 発音動作によって咬合高径 (O. V. D.) を設定するために, 顔面標点の運動軌跡と音声を同時記録する方法を考案し, 文章発音中の下顎位を観察したが, その際に, それぞれの子音の発音時点を音響スペクトログラムに基づいて識別した. これによって, 顎変形症やオーバークロージャーの症例について適応可能な咬合高径を予測するために, 種々に異なる咬合高径での文章発音時の下顎位を観察した. さらに, 無歯顎者の調音運動様式を評価するために, 発音中の口腔顔面の三次元運動経路を観察した. これらの研究において, リアルタイム・スピーチ・スペクトル分析法は, 文章発音中の口腔顔面の調音動作と子音の生産時点を関連づけるために有効であった. |
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| ISSN: | 0389-5386 1883-177X |
| DOI: | 10.2186/jjps.45.1 |