成人腸回転異常症に合併した結腸憩室間膜内穿通の1例

患者は44歳の男性で,左上腹部痛および発熱を主訴に当院を紹介受診した.血液検査で炎症反応の上昇を認め,CTで小腸が右腹腔内に,結腸が左腹腔内に存在し,腸回転異常が疑われた.上行結腸と思しき結腸に壁肥厚および周囲脂肪織濃度の上昇を認め,憩室炎の診断で緊急入院となった.絶食および抗生剤投与による保存治療を行ったが奏効せず,外科転科のうえ手術を行った.手術は腹腔鏡下結腸右半切除術を施行,術中所見でTreitz靭帯の形成は認められず,盲腸から上行結腸は腹壁に固定されていなかった.上行結腸とその間膜に強い炎症性変化を認め,同部位を含めて切除した.摘出標本において,上行結腸に憩室炎および結腸間膜内に連続す...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 77; no. 1; pp. 50 - 55
Main Authors 松木, 豪志, 野村, 和徳, 栁, 秀憲, 一瀬, 規子, 中島, 隆善, 岡本, 亮, 仲本, 嘉彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2024
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.77.50

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Summary:患者は44歳の男性で,左上腹部痛および発熱を主訴に当院を紹介受診した.血液検査で炎症反応の上昇を認め,CTで小腸が右腹腔内に,結腸が左腹腔内に存在し,腸回転異常が疑われた.上行結腸と思しき結腸に壁肥厚および周囲脂肪織濃度の上昇を認め,憩室炎の診断で緊急入院となった.絶食および抗生剤投与による保存治療を行ったが奏効せず,外科転科のうえ手術を行った.手術は腹腔鏡下結腸右半切除術を施行,術中所見でTreitz靭帯の形成は認められず,盲腸から上行結腸は腹壁に固定されていなかった.上行結腸とその間膜に強い炎症性変化を認め,同部位を含めて切除した.摘出標本において,上行結腸に憩室炎および結腸間膜内に連続する膿瘍形成を認め,結腸憩室間膜内穿通と診断した.成人腸回転異常症に合併した結腸憩室間膜内穿通は極めてまれな病態であり,臨床解剖学的に示唆に富む症例と考えられたため文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.77.50