下大静脈への進展を伴う左腎腫瘍の摘出術中に発症した肺塞栓の1例

症例は73歳,男性.下大静脈へ腫瘍が進展した左腎腫瘍に対して,左腎臓摘出術および下大静脈内腫瘍摘出術を施行した.下大静脈周囲の操作中に,経皮的動脈血酸素飽和度および呼気終末炭酸ガス分圧の急激な低下を認めた.腫瘍からの遊離栓子による肺塞栓を疑ったが,経食道心エコーでは同定できなかった.血行動態は安定したため,手術を継続した.閉腹後に胸部造影CT検査を施行し,右肺動脈に肺塞栓を認めたため,体外循環を使用し,肺動脈内腫瘍塞栓摘出術を行った.本症例は,肺塞栓発症後も血行動態の破綻には至らず,術後経過も良好であったが,肺塞栓は致命的になりうる合併症である.術前の一時的下大静脈フィルターの留置など,積極的...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 32; no. 5; pp. 803 - 808
Main Authors 成松, 紀子, 小寺, 厚志, 江嶋, 正志, 橋本, 正博, 中山, 雄二朗, 野中, 崇広
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 2012
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.32.803

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Summary:症例は73歳,男性.下大静脈へ腫瘍が進展した左腎腫瘍に対して,左腎臓摘出術および下大静脈内腫瘍摘出術を施行した.下大静脈周囲の操作中に,経皮的動脈血酸素飽和度および呼気終末炭酸ガス分圧の急激な低下を認めた.腫瘍からの遊離栓子による肺塞栓を疑ったが,経食道心エコーでは同定できなかった.血行動態は安定したため,手術を継続した.閉腹後に胸部造影CT検査を施行し,右肺動脈に肺塞栓を認めたため,体外循環を使用し,肺動脈内腫瘍塞栓摘出術を行った.本症例は,肺塞栓発症後も血行動態の破綻には至らず,術後経過も良好であったが,肺塞栓は致命的になりうる合併症である.術前の一時的下大静脈フィルターの留置など,積極的な肺塞栓の予防と早期診断が重要である.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.32.803