横川吸虫症による小腸穿孔の1例
症例は47歳,男性.糖尿病,慢性腎不全による透析歴があり,今回は肺化膿症のため当院内科入院中であった.腹痛・嘔吐の精査で腹腔内膿瘍による小腸イレウスと診断し,緊急手術を施行した.術中所見は回盲部・ダグラス窩に膿瘍を認め,回腸が強固に癒着していた.回腸にわずかな穿孔部を認め,小腸穿孔による腹腔内膿瘍と考えられた.病理組織検査では回腸粘膜上に横川吸虫を認め,周囲には広範な浅い潰瘍と高度の好酸球浸潤が見られた.以上の所見から横川吸虫症による腸炎が穿孔の主因と考えられた.横川吸虫症の多くは無症状であるが,寄生数が増えると腹痛・下痢などの症状を呈するとされる.しかし,われわれの調べ得た範囲では,本例のよ...
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| Published in | 日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 10; pp. 2611 - 2614 |
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| Main Authors | , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本臨床外科学会
2010
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1345-2843 1882-5133 |
| DOI | 10.3919/jjsa.71.2611 |
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| Summary: | 症例は47歳,男性.糖尿病,慢性腎不全による透析歴があり,今回は肺化膿症のため当院内科入院中であった.腹痛・嘔吐の精査で腹腔内膿瘍による小腸イレウスと診断し,緊急手術を施行した.術中所見は回盲部・ダグラス窩に膿瘍を認め,回腸が強固に癒着していた.回腸にわずかな穿孔部を認め,小腸穿孔による腹腔内膿瘍と考えられた.病理組織検査では回腸粘膜上に横川吸虫を認め,周囲には広範な浅い潰瘍と高度の好酸球浸潤が見られた.以上の所見から横川吸虫症による腸炎が穿孔の主因と考えられた.横川吸虫症の多くは無症状であるが,寄生数が増えると腹痛・下痢などの症状を呈するとされる.しかし,われわれの調べ得た範囲では,本例のように小腸穿孔を発症した報告は本邦初であり,文献的考察を加えて報告する. |
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| ISSN: | 1345-2843 1882-5133 |
| DOI: | 10.3919/jjsa.71.2611 |