高齢者に生じた大腸菌による壊死性筋膜炎の1救命例

高齢者に生じた腎盂腎炎からの血流感染が原因と考えられた大腸菌単独による壊死性筋膜炎の1救命例を経験したので報告する。症例は87歳の女性。糖尿病にて内服加療中であった。右大腿骨頸部骨折で近医に入院したが,意識障害,腎不全などを合併し当院転院となった。意識障害の原因は糖尿病性昏睡であったが,来院時のCTで,腎周囲の脂肪濃度の上昇,右大腿骨頸部周囲のガス像を認められ,腎盂腎炎および壊死性筋膜炎と診断した。糖尿病性昏睡が改善し,状態が安定した入院翌日に,右大腿骨頸部周囲の病巣郭清術を施行した。抗生剤は入院時よりMeropenem(MEPM)を投与したが,後日血液,尿,創部培養のいずれからも同じ感受性を...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 20; no. 10; pp. 843 - 848
Main Authors 白井, 邦博, 吉田, 省造, 北川, 順一, 小倉, 真治, 豊田, 泉, 増田, 剛宏, 橋本, 孝治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2009
Subjects
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.20.843

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Summary:高齢者に生じた腎盂腎炎からの血流感染が原因と考えられた大腸菌単独による壊死性筋膜炎の1救命例を経験したので報告する。症例は87歳の女性。糖尿病にて内服加療中であった。右大腿骨頸部骨折で近医に入院したが,意識障害,腎不全などを合併し当院転院となった。意識障害の原因は糖尿病性昏睡であったが,来院時のCTで,腎周囲の脂肪濃度の上昇,右大腿骨頸部周囲のガス像を認められ,腎盂腎炎および壊死性筋膜炎と診断した。糖尿病性昏睡が改善し,状態が安定した入院翌日に,右大腿骨頸部周囲の病巣郭清術を施行した。抗生剤は入院時よりMeropenem(MEPM)を投与したが,後日血液,尿,創部培養のいずれからも同じ感受性を持つEscherichia coli (E. coli)のみが検出されたため,Ceftriaxone(CTRX)に変更した。壊死性菌膜炎でE. coliが単独で起因菌となることは稀であることから,本例では尿路感染からの血流感染が原因と考えた。集中治療により全身状態が安定したが,さらなる改善を得るため,第18病日に股関節離断術を施行した。その後,全身状態は改善の一途をたどり,第63病日に前医に転院となった。本例を救命し得た要因として,診断から手術までが迅速に行え,最終的には股関節離断術を安全に施行できたことが挙げられ,段階的に適切な手術を行う重要性が示唆された。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.20.843