直腸S状部癌による成人腸重積症の1例

74歳,女性.当院整形外科入院中に粘血便を主訴に当科紹介受診となった.直腸診にて肛門縁より約6cmの部位に弾性硬の腫瘤を触知した.腹部CTで直腸にmulti concentric ring signを呈する腫瘤を指摘され,直腸腫瘍による腸重積が疑われた.注腸造影では腫瘍は蟹の爪様の陰影欠損として描出され,先進部はRa,Rbの境界部にありRsより重積している直腸粘膜が描出された.整復を試みたが不可能であった.以上より,腸重積症を合併した直腸癌と診断し手術を施行した.術中所見ではRsからRbにかけて腸重積が確認された.用手的整復を試みたが,重積腸管が損傷する危険性があったため整復を断念しハルトマン...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 69; no. 10; pp. 2629 - 2634
Main Authors 福田, 康彦, 香川, 直樹, 中原, 英樹, 漆原, 貴, 眞次, 康弘, 三口, 真司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2008
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.69.2629

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Summary:74歳,女性.当院整形外科入院中に粘血便を主訴に当科紹介受診となった.直腸診にて肛門縁より約6cmの部位に弾性硬の腫瘤を触知した.腹部CTで直腸にmulti concentric ring signを呈する腫瘤を指摘され,直腸腫瘍による腸重積が疑われた.注腸造影では腫瘍は蟹の爪様の陰影欠損として描出され,先進部はRa,Rbの境界部にありRsより重積している直腸粘膜が描出された.整復を試みたが不可能であった.以上より,腸重積症を合併した直腸癌と診断し手術を施行した.術中所見ではRsからRbにかけて腸重積が確認された.用手的整復を試みたが,重積腸管が損傷する危険性があったため整復を断念しハルトマン手術を行った.組織学的診断は高分化腺癌,SE,N1 StageIIIaであった. 成人の直腸S状部癌を先進部とする成人腸重積症は非常に稀である.成人の腸重積症例は,症状・所見に乏しい慢性の経過を取ることが多く,診断時には整復困難な状態に陥っておることが予想される.そのため,無理な保存的整復には固執せずに手術を施行するべきであると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.69.2629