地下水中の窒素を再利用する温州ミカンマルドリ方式の環境影響評価
これまで多くの農業地域において化学肥料の多投入の影響による地下水の窒素汚染が報告されている。そこで本研究では,温州ミカンを対象として,地下水に含まれる窒素を農業生産に再利用し,肥料の節減と環境影響の低減を図る栽培体系の検討を目的とした。具体的には,高品質果実の安定生産技術として普及が進む周年マルチ点滴灌水同時施肥法(マルドリ方式)と地下水利用を組み合わせた温州ミカン栽培法の現地試験結果を元に,ライフサイクルアセスメント(LCA: Life Cycle Assessment)手法を適用し,窒素の排出による富栄養化への影響を定量的に評価した。その結果,標準的な栽培体系では生産段階で生じる水系への窒...
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          | Published in | 日本水文科学会誌 Vol. 46; no. 3; pp. 235 - 247 | 
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| Main Authors | , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本水文科学会
    
        2016
     | 
| Subjects | |
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| ISSN | 1342-9612 1883-7166  | 
| DOI | 10.4145/jahs.46.235 | 
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| Summary: | これまで多くの農業地域において化学肥料の多投入の影響による地下水の窒素汚染が報告されている。そこで本研究では,温州ミカンを対象として,地下水に含まれる窒素を農業生産に再利用し,肥料の節減と環境影響の低減を図る栽培体系の検討を目的とした。具体的には,高品質果実の安定生産技術として普及が進む周年マルチ点滴灌水同時施肥法(マルドリ方式)と地下水利用を組み合わせた温州ミカン栽培法の現地試験結果を元に,ライフサイクルアセスメント(LCA: Life Cycle Assessment)手法を適用し,窒素の排出による富栄養化への影響を定量的に評価した。その結果,標準的な栽培体系では生産段階で生じる水系への窒素排出量は富栄養化インパクト全体の90%前後と極めて高いが,マルドリ方式の栽培体系では水系への窒素排出量が大幅に低減し,富栄養化インパクトは標準的な栽培体系の15%前後の低い値となった。水源井戸を末端とする流域としての窒素収支は,マルドリ方式の栽培体系で利用した地下水中の窒素量が生産段階で生じる水系への窒素排出量を上回り,富栄養化インパクトで評価した場合でも浄化型となることが明らかになった。 | 
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| ISSN: | 1342-9612 1883-7166  | 
| DOI: | 10.4145/jahs.46.235 |