術後神経認知障害 —脳内炎症を標的とした予防・治療戦略
高齢手術患者の増加に伴い,術後神経認知障害への対策が重要課題となっている。術後神経認知障害として,術後せん妄と術後認知機能障害が挙げられる。術後せん妄と術後認知機能障害はそれぞれ異なる疾患単位と考えられているが,共通する病態として脳内炎症が注目されている。脳内炎症は,活性化したミクログリアから過剰に炎症性サイトカインが産生・放出された状態である。特に,海馬ミクログリアは加齢により炎症性反応性が増加することが知られており,高齢者に術後神経認知障害が生じやすい原因と考えられる。また,全身麻酔,手術侵襲に伴う全身炎症,痛み,急性ストレス反応,神経障害などは脳内炎症を誘発する。したがって,これらの要因...
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| Published in | 日本集中治療医学会雑誌 Vol. 25; no. 1; pp. 12 - 19 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本集中治療医学会
01.01.2018
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| ISSN | 1340-7988 1882-966X |
| DOI | 10.3918/jsicm.25_12 |
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| Summary: | 高齢手術患者の増加に伴い,術後神経認知障害への対策が重要課題となっている。術後神経認知障害として,術後せん妄と術後認知機能障害が挙げられる。術後せん妄と術後認知機能障害はそれぞれ異なる疾患単位と考えられているが,共通する病態として脳内炎症が注目されている。脳内炎症は,活性化したミクログリアから過剰に炎症性サイトカインが産生・放出された状態である。特に,海馬ミクログリアは加齢により炎症性反応性が増加することが知られており,高齢者に術後神経認知障害が生じやすい原因と考えられる。また,全身麻酔,手術侵襲に伴う全身炎症,痛み,急性ストレス反応,神経障害などは脳内炎症を誘発する。したがって,これらの要因を最小化することが術後神経認知障害の予防・治療に重要である。本稿では術後神経認知障害の病態に関する最新の研究動向を示すとともに,脳内炎症を標的とした予防・治療戦略を考察したい。 |
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| ISSN: | 1340-7988 1882-966X |
| DOI: | 10.3918/jsicm.25_12 |