左上区切除後の肺静脈断端に血栓を生じた1例

症例は65歳女性.CTで指摘された左上葉S1+2の14 mm(5 mmの充実成分)のPart-solid noduleが縮小傾向にないため,診断・治療目的に左上区切除術を施行した.術後6日目の胸部CTで左上区肺静脈断端に16 mmの血栓を認めたため抗凝固療法(ヘパリン持続静注とワーファリン内服)を開始した.その後も脳梗塞などの血栓塞栓症の発症なく,抗凝固療法開始6ヵ月後のCTで血栓の消失を認めたためワーファリンを終了した.肺切除後の肺静脈断端血栓は致死的な動脈塞栓症を引き起こす可能性を秘めた重要な合併症の一つであり,左上葉切除後や残存肺静脈を伴う右上葉・中葉切除後の静脈断端に血栓が多いとされる...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 31; no. 5; pp. 679 - 683
Main Authors 大﨑, 敏弘, 中川, 誠, 小舘, 満太郎, 金山, 雅俊, 宗, 知子, 西澤, 夏將
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 2017
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.31.679

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Summary:症例は65歳女性.CTで指摘された左上葉S1+2の14 mm(5 mmの充実成分)のPart-solid noduleが縮小傾向にないため,診断・治療目的に左上区切除術を施行した.術後6日目の胸部CTで左上区肺静脈断端に16 mmの血栓を認めたため抗凝固療法(ヘパリン持続静注とワーファリン内服)を開始した.その後も脳梗塞などの血栓塞栓症の発症なく,抗凝固療法開始6ヵ月後のCTで血栓の消失を認めたためワーファリンを終了した.肺切除後の肺静脈断端血栓は致死的な動脈塞栓症を引き起こす可能性を秘めた重要な合併症の一つであり,左上葉切除後や残存肺静脈を伴う右上葉・中葉切除後の静脈断端に血栓が多いとされる.今回,左上区切除後に左上区肺静脈断端血栓を生じた症例を経験した.左上区切除においてもできる限り静脈断端を短く中枢側で処理するように心がけることが重要である.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.31.679