門脈血栓症が原因で発症した肝性胸水を伴う横隔膜交通症に対して補強材付き縫合器を用いた胸腔鏡下手術で根治した一例

症例は67歳,男性.胆囊炎に対し胆囊摘出術を施行したが,術後胆管炎に起因する門脈血栓症を併発.その後,体重増加,腹水貯留を認めるようになった.利尿剤内服にて腹水コントロールを行ったが,術後1年目から腹水のみならず胸水貯留を認めるようになり,胸水の増加による呼吸困難を主訴に当院内科に緊急入院した.胸部X線写真で右側に著明な胸水を認めたため,胸腔ドレナージを行った.経過より横隔膜交通症と診断し手術を施行した.胸腔鏡下に右横隔膜に小孔を確認できたため,同部を含めるように補強材付き自動縫合器を用いて切除した.切除部を中心にフィブリン糊を散布し横隔膜を補強した.病理組織学的に炎症細胞の浸潤が認められ,悪...

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Published in日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 34; no. 6; pp. 623 - 627
Main Authors 勝山, 栄治, 大越, 祐介, 竹尾, 正彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会 15.09.2020
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ISSN0919-0945
1881-4158
DOI10.2995/jacsurg.34.623

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Summary:症例は67歳,男性.胆囊炎に対し胆囊摘出術を施行したが,術後胆管炎に起因する門脈血栓症を併発.その後,体重増加,腹水貯留を認めるようになった.利尿剤内服にて腹水コントロールを行ったが,術後1年目から腹水のみならず胸水貯留を認めるようになり,胸水の増加による呼吸困難を主訴に当院内科に緊急入院した.胸部X線写真で右側に著明な胸水を認めたため,胸腔ドレナージを行った.経過より横隔膜交通症と診断し手術を施行した.胸腔鏡下に右横隔膜に小孔を確認できたため,同部を含めるように補強材付き自動縫合器を用いて切除した.切除部を中心にフィブリン糊を散布し横隔膜を補強した.病理組織学的に炎症細胞の浸潤が認められ,悪性所見はなかった.術後経過は良好で現在,再発は認めていない.補強材付き自動縫合器を用いた横隔膜縫縮術は交通部の確実な閉鎖を行うのに有用な手技であると考えられた.
ISSN:0919-0945
1881-4158
DOI:10.2995/jacsurg.34.623