中国への渡航者によるパラチフスの集団2事例の分子疫学的解析

2002年9月から10月にかけて横浜市内で中国への渡航者のS.Paratyphi Aによる2件の集団事例が発生した. この2つの事例の関連性を調査するために, 分離した6株についてファージ型別と, XhaI, BlnI, SpeI, XhoIを用いたPFGEによる分子疫学的解析を行った. これらの6株は全てファージ型がUntypableとなり, 4種の制限酵素を用いたPFGE法では全ての制限酵素で同一のバンドパターンとなり, その類似度も100%となった. また, これらの株は薬剤感受性試験ではナリジクス酸ホスホマイシン耐性で, なおかつフルオロキノロン系薬剤について低感受性であった. サイク...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 80; no. 6; pp. 674 - 679
Main Authors 武藤, 哲典, 山田, 三紀子, 鳥羽, 和憲, 松本, 裕子, 鈴木, 正樹, 北爪, 晴恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.11.2006
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.80.674

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Summary:2002年9月から10月にかけて横浜市内で中国への渡航者のS.Paratyphi Aによる2件の集団事例が発生した. この2つの事例の関連性を調査するために, 分離した6株についてファージ型別と, XhaI, BlnI, SpeI, XhoIを用いたPFGEによる分子疫学的解析を行った. これらの6株は全てファージ型がUntypableとなり, 4種の制限酵素を用いたPFGE法では全ての制限酵素で同一のバンドパターンとなり, その類似度も100%となった. また, これらの株は薬剤感受性試験ではナリジクス酸ホスホマイシン耐性で, なおかつフルオロキノロン系薬剤について低感受性であった. サイクルシークエンス法によりDNAジャイレースサブユニットA遺伝子(gyrA)上のキノロン耐性決定領域(QRDR)において, 83位のアミノ酸がセリンからフェニルアラニンに置換していた. また, トポイソメラーゼIV遺伝子(parC)上のQRDRには変異は見られなかった. 患者や家族からの発生状況の調査等に加えて薬剤感受性試験とPFGE解析により, 今回の2つの事例は中国からの輸入事例であり, フルオロキノロン低感受性の株がその地域に蔓延していることが示唆された.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.80.674